趣味 : Jul.2014

「はいどうも、よろしくお願いします」

「ちょっと前から言いたかったんやけど、自分、趣味持ちや?」

「えらい急に上からくるやん」

「いっぱい趣味があったら、いろんな知識がつくからな」

「趣味あるよ、野球好きやで」

「やる方? 見る方?」

「ゆうたらどっちもやな。昔やってたし」

「へえ~、珍しいな~」

「……割とおると思うけどな」

「俺も野球好きやで!」

「そんなんゆうてきたことないやん」

「いや、実は好きやねん」

「好きな選手とかおんの?」

「正岡子規」

「元祖!? 日本に野球を持ち込んだ人やけど!」

「あのフォルムとかええよな、横からのな」

「教科書そんなんやけど! 絶対、野球知らんやん!」

「野球よりかは、サッカーの方が観るかな~」

「あ、俺、サッカー全然あかんねん。観方がわかれへん。野球やったら、今、何が起きてるかわかるやん。それがわかれへん」

「俺、サッカーは観てるから、サッカーの観方教えたるわ」

「ほんまに? サッカー知ってんの?」

「知ってる知ってる」

「え、どっかのサポーターなん?」

「……? ひざ?」

「知らんやん!」

「え?」

「サポーター違いやん! どこのファンですか? って聞いてんねん!」

「ファンとか! そんなんちゃうねん! サッカーそのものを! 純粋な目で!」

「ほなちょっと教えてよ。サッカーの観方を」

「まず気をつけなあかんねんけどな?」

「気をつけなあかんこと?」

「サッカーの試合ってな、ほとんど夜中にあるから」

「……あ、Jリーグは完全に無視で」

「……? J?」

「失礼なやつやな!」

「ジョン……?」

「カビラのリーグちゃうねん! ジャパンのリーグや!」

「あっ、ジャパンの」

「だから知らんやん!」

「知ってるよ! まあ夜中にあるからな、まずはしっかりとまばたきをして」

「なんやねんそれ」

「お前、コンタクトやろ? 特に乾燥するから」

「眼鏡で観るよ」

「試合が始まったら、まずは全体を観て」

「フォーメーションな」

「……? フォ……?」

「ええわええわもう」

「じっ、と観てたら、目が乾くから」

「ドライアイなん?」

「しっかりまばたきをして」

「だからするて。言われんでも」

「あの、サッカーは、あのー、早いから、スピードが」

「……おお」

「言うとくけどな、まばたきしてる暇ないで」

「お前やで、まばたきしてるの」

「だから、前もってしっかりとまばたきをする」

「俺な、他に聞きたいことあんねん! 細かいルールとか、ポジションごとの動きとか!」

「そういうのは、特に」

「ないんかい!」

「うん」

「観てんちゃうやん、眺めてる、やん!」

「眺め……?」

「それはわかるやろ! 偉そうに言うといて、ほんまは趣味ないんやろ? 正直に言えや!」

「サッカーはほんとに観てるから! 好きな選手もおんねん!」

「誰やねん!」

「ジョン……」

「カビラは選手ちゃうねん。もうええわ」

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