[text] キングオブコント2015
コントの質からいえば、優勝するべきはジャングルポケットだった。
1本目、2本目ともに、台本、演技ともにハイレベルなクオリティで仕上げたコントらしいコントをやってのけたし、もしくは、やはりコンビで築き上げてきた「相方は最高の小道具」という関係性を見事にネタとして具現化に成功したロッチに分があった。
ところが、8代目キングはコロコロチキチキペッパーズであり、某ネット記事にもあったように、第1ラウンドと第2ラウンドを切り離した「M-1方式」であればチャンピオンはバンビ―ノだ。その結果については何の異論もない。間違いなくもっともウケていたのだから、誰が見たって公平な結果だと言える。
しかし結成4年目のコロコロチキチキペッパーズに関して言えば、技術的には他の出場者と比べて明らかに未熟だ。
稽古が足りていないということではない。当日19時からの生放送に向けて、朝9時からネタ合わせを開始したというエピソードからも、当然、相応に積み重ねてきたはずだ。
それでも、どう足掻いても時間の壁は越えられない。あくまで技術的なことだけを言えば、何十回の単独ライブ、何百回の舞台、何千、何万の稽古を繰り返した年月や、数々の賞レースを戦い抜いてきた経験の前には到底及ばないことに、いささかの疑問の余地さえない。
お笑いというものは、やはり技術論のみでは語れない。
当然、ファイナルステージにおけるバンビーノのネタなどは特に圧倒的な練習量で補強する必要があるし、 同じくコロコロチキチキペッパーズについてもオケにあてぶりをするタイミングはシビアだ。
それでも、技術は発想という根本にして必須の要素を補強する手段にすぎないのだ。
今大会において高い評価を得たコロコロチキチキペッパーズ、バンビーノともに、披露したネタは2本とも、ひとつないしふたつのルールが提示された時点でほとんどが完結する非常にシンプルなものである。その時点からさらに起承転結で展開していく、過去のキングたちも得意とするようなコントより、瞬発力・爆発力の点で上回った。それは、まさしくロッチの試着室のネタにも当てはめることができるし、2本目にスタイルの異なるネタをチョイスしたことが敗因と言うこともできる。
発想は何をも凌駕する。
あくまでも今大会においてはだが、本質的な強さを持ったものこそが結局はもっとも強く、よりそれをダイレクトに表現するべきものがコントなのでなはいか、という印象がハイライトとなった。
だからこそ、何十、何百、何千何万を超えてきた今回の敗者に、そんなものじゃないだろう、もっとすごいものを見せてほしいと願う。
その覆すことのできない時間を積み重ねたことに裏打ちされた技術で、ひとつの発想をとんでもない化け物へ昇華させ、見たこともない笑いの世界を作り出してくれるのは、あなたたちしかいないと思うから。