(archives) [review] この一年、最も重要なこの曲、この映画、この本 (rockin'onエントリー用) : Oct.2013

今年のトピックとして、SUMMER SONIC2013におけるMetallicaのショウ(EN時の”Battery”の迫力と盛り上がりはサマソニ’13の圧倒的なハイライト)であったり、THE YELLOW MONKEYデビュー20周年記念におけるファンベストの発売(”JAM”を抜き”バラ色の日々”が1位を獲得したり、平成25年にTSUTAYA等の有線から”太陽が燃えている”が流れる)を中心とした一連のイベントであったり、の子がソロアルバム『神聖かまってちゃん』(タイトルがあまりに秀逸。過去にバンド名義で発表した楽曲と比較し、ヴォーカリングに対する意識の比重が増していることが印象的で、これは外部からサポートを迎え入れたことによる影響なのか、現在のの子のモードなのか)をリリースしたりと、直近だけでもニュースには事欠かないのだが、「この一年、最も重要な~」というからには、何か大きな流れを決定づけてしまったようなものであるべきだと考え、この曲を推したい。

”BiSimulation”、昨年7月にavexよりメジャーデビューした「Brand-new Idol Society(=新生アイドル研究会)」、通称「BiS」の、3月にリリースされた6th Singleだ。作曲を日高央(THE STARBEMS、ex.BEAT CRUSADERS)が務め、今年のROCK IN JAPAN FES.へDJブースで出演した際にも一曲目にプレイされた楽曲である。

BiSは続く7th Single『DiE』のカップリングにて、作曲・津田紀昭(KEMURI、etc...)、演奏・THE REDEMPTIONという驚愕のアイドルとスカコアのクロスオーヴァー”MURA-MURA”(この後、津田がBiSの「現場」でダイヴをする姿や、メンバーとのチェキ会の列に普通に並ぶ姿が次々と目撃されている)、極めつけの第三弾として8th Single『Fly/Hi』のカップリングにて難波章浩(Hi-STANDARD、ex.etc...)作曲の”Hi”を発表(難波が自身のTwitterにてBiSメンバーと撮影した写真をアップロードしたことは衝撃的な出来事だった)。インディーズデビュー直後の1st Singleより突き進めてきたアイドル界のロック・アイコン路線すらも超越した、新世代のガールズ・パンク・グループ(内部分裂を中心としたメンバーの加入・脱退のサイクルの早さまでHR/HM等を含めたロック然としている)と形容しても差し支えがない地位を確立、前述のRIJ FES.をはじめ数多くの夏フェスに参戦。それ以外にも、今夏には「キング・オブ・ノイズ」非常階段とのコラボ『BiS階段』を結成、渋谷WWWと難波BEARSにて阿鼻叫喚の地獄絵図を繰り広げるなど、アヴァンギャルドな活動を行っている。

その口火を切ったのが、前述の”BiSimulation”である。バリバリのパンク畑に属し、勢力的に第一線で活動する日高が、アイドル界においてロック寄りのオルタナティヴな存在であるにせよ、根本的には「アイドル」であるBiSに楽曲を提供することは、 アイドルとロックの関係性の変化を生み出したと言ってもいい。

5月に、ももいろクローバーZがOZZFEST JAPAN2013に出演したことは記憶に新しく、マキシマム ザ ホルモンの亮君はステージ袖でその姿に涙したとも噂されるが、今夏以降も、ぱすぽ☆が安野勇太(Hawaiian6)作曲のシングルをリリースし、ひめキュンフルーツ缶がGARLIC BOYSと対談するなど、 小さなトピックかもしれないが、だからこそ想像もつかなかったレベルで、 同じイベント/ステージに立つというレベルを超えてアイドルの存在がロック界隈においても影響を及ぼしている。

少なくとも、つい数年前までは明らかに見られなかった現象である。 奥田民生がプロデュースしたPUFFYや、Perfumeの存在という迎え入れられた前例こそあるが、アイドル然とした活動から距離を置いた彼女達は「特例」であったと認識できる。

業界での生き残りをかけて変質を繰り返し、幅広い層へのアプローチを試みるアイドル側と、領域へ踏み込むことを(面白可笑しげにも)受け入れるロック側。完全にクロスオーヴァーしてしまうことこそなくとも、この関係性が今後、どのようなケミストリーを起こしていくのか。

意外なもの同士の組み合わせが、音楽の歴史が変わる瞬間を生み出してきたのだ。

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