1997.4.24『バンコク⇒チェンマイ バスでの移動』①

1997.4.24『バンコク ⇒ チェンマイ バスでの移動』①

  あまり眠れないまま、バスの中で夜はあけようとしていた。俺は急遽バンコクを離れることに決めた。当初の予定では1週間ほどバンコクに滞在し、メガネを作ったり、ビザを取ったりいろいろしようと思っていたのだが、あまり長くバンコクにいるのは時間がもったいない気がしてきた。


 バンコクでの生活は確かに快適だった。宿もそんなに高くないし(シングル、バス、トイレなし 80バーツ(約400円)、グリーンハウス)、屋台がたくさんあるので、食べるものにも不自由しない。何でも売っている。しかし快適すぎるのだ。


  とくに俺の泊まっている宿は日本人がやたら多く、いつも食堂でたむろしてしまうため、あまり英語を使う必要もない。日本にいるのとたいして変わらないのである。それに市内ではあまり回りたいところもなく、2日いると少し退屈してきた。
   

   機内で知り合った山崎さんも25日の夕方のバス(昨日)でタオ島へ出発することとなったので、俺も急遽バンコクを離れることとした。今までの旅のように日数に制限があるわけではないので、あまり急ぐ必要はないことは分かっているのだが、出発せずにはいられなかった。それにバンコクにいる間はどうしても、山崎さんや木村さんを頼りにしてしまうため、一人での行動がしたくなってきたのだった。

   チェンマイへのバス代は280バーツ(約1200円)。本当は200バーツの安いバスへ乗りたかったのだが、急に申し込んだためそれらのバスは満席であり、280バーツのVIPバスにせざるを得なかった。

   夕方5時。山崎さんと俺、そしてプーケットへ旅立つ鈴木さんは、残る木村さん他に見送られながら、カオサンロードをあとにした。VIPバスは通常のバス停ではなく、長距離専用バスターミナルで乗るらしく、そこまではバンでの移動となった。

   バンの中で一緒だったのは日本人と思われる5人組みの女の子(行儀が悪かった)、そして日本人と思われる女の子2人組みと俺である。俺はバンのいちばん後ろの席に座っていたが、前に座っていた素朴な女子大生風の女の子2人組みのほうが、俺のほうをチラチラと見ていた。こちらから何か話しかけようかなと思っていたら、向こうからいきなり「Are you Japanese?」と英語で話しかけてきた。

 
 俺の頭の中は「???」となっていた。なんで英語? 俺はてっきり日本語での会話を想定していたので、簡単な英語の言葉すら出てこない。「Yes!」というのが精一杯だった。本当は「あなたたちも日本人ではないのですか?」と英語で言おう思ったのだが。

 すると向こうから「We are Korean」(私たち韓国人です)と言ってきた。聞くところによると彼女たちはれっきとした社会人であり、2人とも25歳。1ヶ月間の休みが取れたので、バンコクーチェンマイープーケットーマレーシアと旅する予定だという。職業はインテリアデザイナーだが、別々の会社に勤めているらしい。彼女たちはまだ10代ぐらいに見えたので「You look very young.」という、子供っぽい顔で「Thank you」と応えてきた。
 

 バンがバスターミナルに着いたものの、VIPバスの出発までは1時間30分ほどのあったので、それまで俺たち3人でケンタッキー・フライドチキンに行くことにした。


 彼女らの話す英語もかなり怪しい英語であり、俺のレベルとたいして変わらない程度だと思う。どうもdo とdidの区別をよく間違えるようで、現在と過去がごちゃまぜになっている。やっぱり英語で間違えやすい箇と所は日本人も韓国人も同じなのだと妙に感心した。

 「English is very difficult language(英語はとても難しい言葉ですよね」と、彼女らは大きくうなずき「 I think too」と言っていた。
 英語が大して話せない日本人としては、やはりネイティブと話すより、英語を母国語として話さないアジア人と話すと心が落ち着ちくものである。とは言ってもお互いにかなりあやしい英語を使っているため、意志の疎通は大変でとても疲れる。
 

 彼女らは韓国ではスラムダンクがとても人気があるとか、かつてANAの飛行機に乗ったことがあるなど、日本のことをけっこう知っていて、一生懸命つたない英語で話してくれる。

 俺も韓国のことについて何か言おうとしたのだが、言葉に出して言えるほどか韓国のことを知らないのである。(当時は今ほど韓国の文化が日本に知られてなかった)
 とっさにキムチのことが頭にうかび「I like Kimuchi (私はキムチが大好きです!)」などと言おうとしたのだが、あまりに低レベルなので、口に出して言うのはやめておいた。

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