1997年3月31日①(出発前夜)

1997年3月31日①(出発前夜)

今日で僕が社会人となり、三井リースを務めるようになって丸5年。そして今日僕は会社をあとにした。会社辞めるっていう実感はまるでなかった。明日また会社に来るそんな感じがいつまでたっても抜けなかった。

最終日は恒例で、会社の中を回りみんなに挨拶をすることになっている。つい最近まではこれが嫌だった。できることなら挨拶はごく親しい人物だけにとどめ、こっそりと去りたかった。

だけど今日挨拶に回る時になっても不安な気持ちはまるでなく、“自分は自分の信じる道を進むのだ”というそんな気持ちで回ることができた。

今日辞めるときになって初めて気付いた。俺は皆から“ものすごくお世話になりながら生きてきたんじゃなかろうか”って。三井リースにいた5年間についてもそうだ。三井リースには愛すべき人がたくさんいた。そして愛してくれた人がたくさんいた。

俺は『たくさんのものを彼らから、そして彼女らから与えられてきた』ということに初めて気付いた。どうすればみんなに恩返しができるのだろうか。皆から与えられたものはあまりに大きすぎて、とても今の俺では返せそうにない。

それは、これからみんなに恩返しできるように、“一生懸命生きていかなくてはいけないんだ”と思った。 彼のためにも、まず俺が頑張って行かなければいけないんだなって思った。

俺は海外に行くことによって半ば、“その後の自分はどうでもいい”と思うようなところがあった。自分の命に対して少し執着心がなくなってきていた。だけど、今日みんなが“生に対して無関心になっていた俺”を引き戻してくれた気がした。

どうすればみんなに恩返しができるのか、それは俺の自分の夢(目的)を叶えるしかない。昔からの夢。みんなが、自然や仲間とともに楽しめる空間づくり。何て言ったらいいのだろうか、みんなが気兼ねなく来れる場所、帰ってこれる場所。みんなに楽しんでもらうために、人生を楽しんでもらうために、いつかはこれは叶えようと思う。そしてそれができたときこれはみんなに恩返しできるだと思う。


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