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64.草木の霊


不器用な善人

 森を歩いていると、草木そうもくの霊が、不意に現れることがある。 
 大抵、人型の、稲藁の姿をしている。身の丈190センチメートルあり、はじめはぎょっとするが、こちらに好意があるから現れるので、心配いらない。たとえば、これが現れると、近くに湧き水があったり、コシアブラがあったり、アケビの実が成っていたりする。冬は、中が部屋になっていて、寒さを凌げる。 
 いやなのは、背後に突然現れたときで、とくに夜道でこれをやられると、心の臓が止まりそうになる。しかし、大体そういうときは行燈を提げていて、後ろから照らしてくれるのである。

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