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99.時実博士


 時実ときざね泉一郎せんいちろうは、1902(明治35)年、稲穂県神代島じんだいじまに生を受けた。
 博覧強記の天才として知られ、帝大理学部を経て、細菌学の研究者となった。だが、見えないものへの関心を深めた時実博士は、休日には奥山へ籠もり、密教秘術の修練に勤しんだ。
 時実博士は、黒姫山の霧下山人の手引きに従い、霊闘者となった。彼は、あのモーリス・バーバネルも所属した、敵国であるはずのイギリスの霊闘研究所に誘われ、客員研究員となったが、この研究所は、死者しか所属できないはずだった。じつは、時実博士は、1930年代の半ばには、肺結核で世を去っていたのだ。
 時実博士は、幽体で宇宙を浮遊している折、地球を卵のように呑みこもうと企む、エメラルド色の大蛇の姿を見た。大蛇を征伐するために、死んだ覚者たちと時実旅団を結成し、「裏世界」のンディマ国王の支援を受けて、戦いの旅に出発した。

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