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34.金平糖定食


金平糖定食

「お待っとさん」
 そう言って、おばあさんが運んできたのは――
 金平糖だ。
 おかずが金平糖で、味噌汁の具まで、金平糖の――
 金平糖定食なのだ。
「これはなんです?」
 たまらず、言った。
「わたしは、サバの定食をお願いしましたが」
 すると、おばあさんはぼくに意味ありげなウインクをし――
 そそくさと、戻っていった。
 いや、サービスだとしても、これはちょっと……
 けれども。
 食べることにした。
 残すのは悪いからだ。
 さて。
 さすがに、米と金平糖をいっしょに頬張るのは、気がひけた。まずは金平糖を拾って食べ、次に味噌汁の金平糖を食べ、残った米と味噌汁を、猫まんまにして食すことにした。
 苦しかった。
 金平糖までは良かった。
 金平糖までは良かったが――
 猫まんまだ。
 味噌汁が小ぶりで――かなりの部分、米だけを、はもはもするしかなかった。
 考えてみれば、これからサバ定食が来るのだ。
 ご飯と味噌汁は、残しておいてもよかったが――
 乗りかかった船だ。
 食べきってしまった。
「お待っとさんでした」
 おばあさんが、サバ定食をもってきた。
 おばあさんは、また、意味ありげなウインクをした。

サバ定食(サービスつき)

 ぼくは、そのまま崩れ落ちた。


 
 
 


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