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Photo by
kirico_katori
68.カーブの怪
![](https://assets.st-note.com/img/1733693671-9MT4E0QJc7IXHze2oY1jSCsK.jpg?width=1200)
前方80メートル、緩やかなカーブの出口付近に、雪煙が舞っている。シフトダウン。減速する。黒いワンボックスが、路肩に乗り上げている。スタックだ。
カーブを抜けたところに車を停め、歩み寄る。
やはり、スタック。まただ、とぼくは思った。
「白い、人の影のようなものが見えたんです」
ほら、また、同じことを言っている。
「それが、道路を横断するように見えたので、慌ててフットブレーキを踏んだらスリップして――」
とりあえず、スコップで最低限の雪をどかし、牽引ロープで引っ張ってやった。ほどなく、脱出した。
このカーブは、やはり変なのだ。
この道路自体が、リゾートホテルの私道で――
したがって、まっすぐに、巨大なスキーリゾートにつながる道なのだが、出来た当初から、このカーブでだけスタックやスリップが多発しているのだ。それほどきついカーブでもないのに、である。
「ありがとうございました」
「はい、お気を付けて」
――決まって、人影が現れた、と言う。
それも、白い、お化けのようなものが。
さっきの人も、人を轢いたかも知れない割には落ち着いていたが――なんとなく、これは人じゃないな、というのは察知したのかもしれない。人の現れるわけがないのだ。この道のほかは、深い雪原なのだから。
とまれ、原因は不明である。
カーブの怪、としか言いようがない。
リゾート開発のときに、なにか土地神とか、もっと古くからいた人の気に触ったのだろうか? とも思うけれども、本人に訊いてみることもできないし、地元の人間としては、ただ気をつけようと、それだけである。