見出し画像

11.犬養普佐衛門日記

 1779(安永8)年といえば、大隅国おおすみのくにの桜島が大噴火を起こし、死者斃馬を合わせ、500に余る惨禍となった年である。
 ここに、薩摩街道、市来いちき宿の商人のものした『犬養いぬかい普佐衛門ふざえもん日記にっき』を紐解くと、次のような記述に当たる。
「――灰塵飛揚かいじんひよう、其の勢いれつにして、商賈ことごとくなすこと能わず。一日いちじつ、大崎より旅人来れり。曰く、火の麓方ふもとがた黒函くろばこを三ツ脚に載せ、支え持ちたる異装の徒あり。怪しみ之を問うに、黒函は今次の災厄を記録せんが為なりと」
 旅人の言う「異装の徒」とは誰なのか?
 黒函――
 三ツ脚――
 これは……
 これは、カメラクルーではあるまいか?
 250年前に、桜島大噴火をカメラ取材した者たちがいたのか?
 彼らは時間旅行者なのか?
 現在も、記述の真意は解明されていない。

いいなと思ったら応援しよう!