牡蠣の炊き込みご飯で思い出す、フランス人が牡蠣食らいまくってる場所。
私が住んでいる県では11月頃から地元牡蠣がスーパーに並びます。最初は小さい。そして月を追うごとに大きくなって2月下旬から3月になると最大級の牡蠣が出てまいります。
東京に住んで年中等しい大きさの「広島県産牡蠣」に慣れていた目には、月を追うごとに大きくなる牡蠣をスーパーで見る事が珍しく、それだけでも旬を感じて地元牡蠣に愛着を感じていく今日この頃です。
そんなわけで今日は地元産の牡蠣を使った炊き込みご飯。愛着を感じる地元牡蠣ですが、使うのは3月に入ってもやや小ぶりの安い物。炊き込みご飯だから、大きさよりも量を狙いました。作り方は文末に。
さて、世界旅行をしていると牡蠣に出会えるポイントが数々あります。牡蠣料理をする度に、旅で出会った牡蠣エピソードを都度都度ご紹介しております。今日は西ヨーロッパの牡蠣。
西ヨーロッパで牡蠣というと、皆さんはどこを思い浮かべるでしょうか?私はフランスのカンカルを思い出します。
〇カンカルってどこ?
カンカルはブルターニュ地方にある街です。フランス北西部に位置するブルターニュ地方はブルターニュ半島エリアですので三方を海に囲まれています。オマール海老や牡蠣などの海産物、痩せた土地柄から作られるそば粉を使ったガレットなどが有名で、聞くだけでグルメの予感のする場所です。
カンカルを訪れたのは2011年8月の事でした。2011年は4月下旬から9月初旬までの5か月半をフランスとイギリスで過ごしていました。8月にノルマンディのモンサンミッシェル近くのキャンプ場を拠点に観光する事にしたある日、お隣のブルターニュ地方にあるカンカルを訪ねたのでした。因みにモンサンミッシェルはノルマンディ地方の西端、カンカルはブルターニュの東端に位置していて、車で1時間弱という距離です。
〇カンカルと日本を結ぶエピソード
2011年にカンカル訪問というのを聞いて「お、運命的ですね!」と思った方もいらっしゃるかもしれません。というのも2011年の東日本大震災で大打撃を被った三陸地方とカンカルには牡蠣を通じての交流があるからです。
カンカルで現在流通している牡蠣は大きく分けて2種類のタイプがあります。クルーズCreuseと呼ばれる、下がくぼんだ日本でもよく目にするマガキと、プラットPlateやブロンBelonと呼ばれる平べったい形の牡蠣、ヨーロッパヒラガキです。有史以前から牡蠣が食べられているカンカルですが、1870年代まではカンカルの牡蠣といえばヨーロッパヒラガキでした。
ところが1800年代半ばに牡蠣人気の乱獲からヨーロッパヒラガキが激減したので、1870年代からポルトガル産牡蠣の養殖を開始。これが大成功してフランス中でポルトガル産牡蠣の養殖が確立されるようになりました。1920年代になるとヨーロッパヒラガキは今度は伝染病により激減。1960-70年にはポルトガル産牡蠣も病気でほぼ全滅。そんな絶望的な状況の中、その惨状を聞きつけた広島や三陸の牡蠣養殖業者がカンカルに稚貝を送り、当時の牡蠣の病に強かった日本産のマガキがカンカルに定着するようになりました。
それから40年、今度は2011年に三陸の牡蠣養殖業者が大打撃を被ります。そこでフランスの牡蠣養殖組合、商工会議所等が「France-Okaeshi」プロジェクトを立ち上げ、牡蠣養殖に必要なロープやブイを送る「恩返し」を行ったんだそうです。
そんな大きな歴史のうねりの中、よく事情もわからずにカンカルでマガキを食べていたってわけです。
〇カンカルで牡蠣を食べるなら「ココ」だったのか!
モンサンミッシェルからカンカルに向かうと40分くらいの所から、生牡蠣を山積みにした素敵なレストランが道沿いに並んできます。カンカルの牡蠣養殖場の様子を知らなかった私たちは、養殖場が単なる牡蠣の畑のような場所で、観光客は食べられないかもしれないという懸念がありました。なので、とりあえず食べられる所で食べておこうと、まず目に入った一軒目で1番の牡蠣を1ダース13ユーロで頂きました。うん、旨い。
カンカルの街に到着すると、それはもう美味しそうなお店がひしめき合っています。さっきは1番の牡蠣を食べたので、今度は最高に大きなランクの0番の牡蠣を1ダース。この辺りの牡蠣は大きさによって番合がつけられ、番号が少ない0番が最大級ってことになっていました。0番1ダースは、本場カンカルの街中だと11ユーロ。うわーい、安くなってる!
そしてカンカルの街中をぶらつきながら街はずれの海に面した養殖場に到着したら、何と!!!!
養殖場の目の前に、日本のお祭りに出店している屋台くらいのお店がずらりと並んでいるではありませんか!
お店の商品は牡蠣のみ。どのお店も大きさ毎に仕分けられた牡蠣をずらりと並べていて、3-4番クラスだと1ダース6ユーロ。ここだったのか、ここが最安値だったのか、、、。牡蠣の大きさと数を選んでお金を払うと、殻を開けてくれた牡蠣とレモンを乗せた皿を渡してくれます。
養殖場を見下ろす場所には、いい感じに座れる堤防があり、誰もがそこに腰かけて生牡蠣を楽しんでいました。フランス人が生牡蠣好きとはいえ、こんなに大量の生牡蠣をこんなに大量のフランス人が楽しんでいる場所を見ると「あんたら、ホンマは日本人なんちゃう?」と言いたくなる光景。日本人としては日本の海産物市場に来たようで非常に親近感が沸きました。
今と違ってネットでの情報が簡単には得られにくい時代だったので、ここに来る前に既に一人で12個食べてしまったのですが、悔しいので更に1ダースを注文して一人6個食べました。かなり辛い経験でした。
生牡蠣って一日にそんなに食べられるもんじゃないのね。
ということで、カンカルを訪ねる皆さん、養殖場目の前のこの場所にまずは来ましょうね。
〇西ヨーロッパで一番の理由
さて「西ヨーロッパで牡蠣といえばカンカル」というイメージを持ったのは、カンカルを訪れたからだけではありません。
2年後の2013年、フィレンツェでルームシェアして1か月を過ごした時の事。フィレンツェにはエッセルンガという少し高級なスーパーがありました。扱っているハムやチーズも産地を明記した高いけど美味しい物を置いていました。お惣菜なども「タコとブドウのマリネ」とか「洋ナシのラビオリ」とか、イケてる物を置いているので、かなりお気に入りになったスーパーでした。そのエッセルンガで売られていた生牡蠣がブルターニュ産だったんです。グルメで鳴らすエッセルンガで扱う生牡蠣がブルターニュ産なんだなぁという事で、カンカルへの思いを新たにしたのでした。
それでは、今日作った「牡蠣の炊き込みご飯」の作り方などです。
参考:aosトラットリア
あと少しでコレが食べられなくなる!牡蠣とドライトマトの炊き込みご飯【 料理レシピ 】
★ 『牡蠣の炊き込みご飯』
<材料 4人前>
米 2.5合
牡蠣 250g
にんにく 1かけ
しょうが 1かけ
トマト 1/2個
干し椎茸 2枚
白ワイン 50ml
水 50ml
オリーブオイル 大さじ1
塩 小さじ1
ローリエ 1枚
こしょう 適量
あれば塩漬けケッパー 適量
大葉
<作り方>
牡蠣をボウルに入れて塩と片栗粉各大さじ1を振りかけて揉み、水を入れて汚れを洗い流す。これを2回繰り返して水を切ってキッチンペーパーで水気を拭き取っておく
トマトは1cm各切り、しょうがは千切り、干し椎茸は水をはったボウルに入れておく
フライパンにオリーブオイルとつぶしたにんにくを入れて弱火。にんにくの香りがたってきたら牡蠣を入れて中火
3が煮立ってきたら、水50mlと白ワイン50ml加えて弱火で1分加熱。火を止めてザルにとって出汁を冷ましておく
炊飯器に米、4の出汁、2の干し椎茸の戻し水(規定に足りなければ水)、刻んだ椎茸、トマト、しょうが、ローリエ、3のにんにく、塩小さじ1を入れて炊く
炊きあがったら3の牡蠣を炊飯器に入れて5分蒸らす
器にもったら、ケッパー、刻んだ大葉を飾る
ふわっと優しく様々な旨味が溶け込んだご飯。なので、大葉、刻みネギ、ケッパーなど薬味によるバリエーションもかなり楽しかったです。