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僕のプライマル。にはいつもこの曲が。#人生を変えた一曲

カツセマサヒコさんが自身のnoteで、#人生を変えた一曲 の記事を書かれていました。

自分も似たような動機でバンドを始めたこともあり、共感しっぱなしの素敵な文章でした。

が、ただ一つ、ちょっとした不満が。
THE YELLOW MONKEYの「プライマル。」が噛ませ犬みたいになっちゃってませんか?と。

何を隠そう、僕の人生を変えた一曲はおそらくこの「プライマル。」。
演奏して上手くいきませんでしたー、だけならいざしらず、おならて。
そんな紹介のされ方では少し腑に落ちなかったので、自分がこの曲の何が素晴らしいかを書くことにしました。(こんなこと言ってますが、カツセさん大好きです。)

youtubeでフルのPVがアップされているので、まずはぜひ、お聞きください。

明るいサウンドで作られていることもあり、通して非常にポジティブな印象を感じる方が多いと思います。
しかし、聞きこんでいくとそれだけでないことが徐々に分かってくるんです。

歌詞を見ながら聞いてもらうと、どうやらこの曲は「君」との別れの曲のように思えます。
1番サビの歌詞がこちらです。

VERY GOODだいぶイケそうだ
振り切ったら飛べそうじゃん
今度は何を食べようか?
卒業おめでとう ブラブラブラブラ
紅塗った君がなんか大人のように笑うんだ
悪いからずっと見とれてた

この掴みどころのない歌詞も、THE YELLOW MONKEYの魅力です。
「振り切ったら飛べそう」、「卒業おめでとう」など、新たな門出を感じる言葉が散りばめられています。
また、「紅塗った君がなんか大人のように笑うんだ」という歌詞も、「君」との距離を感じさせます。
卒業ソングのようです。

2番サビは

VERY GOODだいぶイケそうだ
キツかったら脱ぎゃいいじゃん
今度は何を着てみようか?
卒業おめでとう ブラブラブラブラ
紅塗った君がなんか大人のようにまとうんだ
似合うけどちょっとムリあった

と、こちらも卒業する「君」が急に大人になってしまう気がする複雑な男心…のような歌詞に感じますね。
ポップな曲調で別れを歌っている、強がりめいた曲にも思えてきました。

いい曲ですよね。


しかしこんないい曲であるにもかかわらず、実はこの曲、当時多くのファンに絶望を与えたんです。

THE YELLOW MONKEYは90年代に特に人気のあったバンドだったのですが、残念ながら2001年に活動休止、そのまま2004年に解散してしまいました。
(しかしその後、2016年にめでたく再結成をしています!そこから知ったという人も中にはいるんじゃないでしょうか。)

そして、件の「プライマル。」は2001年に発表された曲です。
そう、活動休止後にこの曲を発表し、結局その後THE YELLOW MONKEYは解散してしまったんです。
当時のファンからすると、活動休止後の唯一のよりどころ。活動再開を待つ、一縷の望みがこの「プライマル。」だったわけです。

しかしこの曲、先ほど紹介したように別れの歌なんです。
これを聞いた当時のファンの気持ちを思うと、もうツラいツラい。。。
(自分はTHE YELLOW MONKEYのよさを理解できるような年齢ではありませんでした。)

歌詞の解釈には諸説あるのですが、その中でも、この「君」がバンドを表しているのではないか、というものがかなりしっくりくると感じています。

VERY GOODだいぶイケそうだ
振り切ったら飛べそうじゃん
今度は何を食べようか?
卒業おめでとう ブラブラブラブラ
紅塗った君がなんか大人のように笑うんだ
悪いからずっと見とれてた

吉井さんはバンドでの自分の価値や音楽性について悩んでいたそうです。
バンドが自分とは遠い存在になってしまった、そんなことを歌っている曲のように感じられるわけですね。

このあたりから、この曲を歌う吉井さん、後ろで演奏しているメンバーの気持ちを考え出すと、感情があふれて止まりません。


歌詞をいくつか切りぬかせていただきます。

あがり目とさがり目のモヤモヤを束ねいて
残さずに捨てることは抱えるよりそれよりもねえ?
誰の景色?清々しい風が懐かしい
油絵のカサブタよりリアルだって名言!!
ありがとう 絆と先々の長い願い
花柄の気分もまた一日のうちたった6秒
雪のように深爪の朝を身にまとい
暖かな優しさほど罪と知った名言!!
君の名はこの僕に何を残したい
思い出は重荷になるという…
VERY GOODだいぶイケそうだ
旅立ったら消せそうじゃん
今度は何を歌おうか?
卒業おめでとう ブラブラブラブラ
手を振った君がなんか大人になってしまうんだ
さようならきっと好きだった

最後の歌詞なんてこれ泣いちゃいますよ…。


うまくいかないもどかしさや、きっと本当に好きだったバンドを手放さなければならない悲しさ。一方で、ようやく手放せる喜び、心が軽くなる感覚。
それをまとめて明るく歌う吉井さんの強さや、そうやって振舞わないと歌えない不器用さ。
そういった感情や人間らしさの絡まりがこの曲から感じられるんです。

THE YELLOW MONKEY、特に吉井和哉の本領は「希望と絶望の同居」だと思います。
生きていくうえでは、白と黒でハッキリ分けられないモヤモヤがいくつもあります。それでも前に進まなくてはいけない。絶望を感じながらも希望に向かっていかなければいけない。
そんなとき、背中を押すわけでも励ますでもなく、そばに寄り添ってくれる曲が「プライマル。」です。
今までもこれからも、僕はこの曲をそばにおいておきたいなあと思っています。

「プライマル。」は原初、はじまりといった意味を持ちます。
なにかからの卒業は、なにかのはじまりでもある。
手垢のついた表現ですが、この曲はそんな言葉がしっくりくるのです。

2016年、THE YELLOW MONKEY再結成後のライブで一番最初に演奏された曲も「プライマル。」でした。
バンドの新たな始まりを歌うとともに、多くのファンがこの曲に感じていた絶望は、あの瞬間希望へと変わりました。

希望と絶望のないまぜの中にこの曲はあるわけではありません。
絶望から希望に向かうとき、そこがきっと「プライマル。」なんでしょう。

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