宮古島に呼ばれて。
先日、仕事の都合で宮古島を訪れた。
沖縄本島や石垣島には何度か訪れていたけれど、宮古島に足を踏み入れるのははじめて。
宮古島の上空からは、島の周りをぐるりと取り囲む美しい青色の海がよく見えた。
後から聞いたところによると、宮古島には大きな河川が流れていないので土砂が海に流れ込まず、澄んだ青色が保たれているらしい。
五月の初め、梅雨入り前の島に降り注ぐ日差しはカラッとしていて吹く風は心地よく。
砂浜をえっさほいさと登った先、パッと視界が開けて目に入ってきたのは、一面の真っ青な海、寄せては返す白い波。
波打ち際、はしゃぐ見知らぬ彼女の橙色のワンピースが眩しい。
夕暮れ時、海沿いの公園で談笑するご夫婦。
夏の夕暮れ特有のやさしい太陽の光に照らされて、道端の木々の緑が艶やかに輝いていた。
日没少し前、アイスコーヒーを片手に、島の方に教えてもらったビーチへと車を走らせる。
それなりに人は集まっているものの、
各々が自由にのんびりと過ごしているのでまったく騒がしさのない、静かなビーチ。
私は砂浜にぺたり腰をおろして、もらったばかりのサーターアンダギーを頬張りながら、
沈みゆく大きな太陽と、海の上にゆらゆらと伸びる夕陽の道をぼんやり眺めた。
波打ち際、きらきらと光が踊る。
頭上を、ときおり飛行機が通り過ぎる。
ただただ、寄せては返す波音に耳を澄ませて。
あまりに満ち足りていて、穏やかで、今を表すのに"幸福"以外にどんな言葉があるだろう。
一生のうちに何度、こんなにも幸福な夕暮れを迎えられるだろう。
日がすっかり沈み宿に戻るころ、夜空には東京では見ることのできない、数えきれないほどの星々が瞬いていたのを憶えている。
後日、東京に戻った私の元へ、島の方から一通のメールが届いた。
「あなたが来たあの日。あんなにも美しい夕暮れはここに長年住んでいても頻繁には見られないですよ。あなたみたいな人のこと、島では "宮古に呼ばれているね" と言ったりします」
こころに、ぽっとあたたかな灯りがともったように思うと同時に、
耳の奥でざざん、と宮古島の波音が聴こえた気がした。
呼ばれていた、のかもしれないし、そうでないのかもしれない。
けれど、確かなことがひとつ。
また必ず、あの美しい島を訪れたいとおもう。
梅雨が明けたら島には、賑やかで光に満ちた、まぶしい夏がやってくる。
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