自民党ができなかった「年収の壁」に期待すること
年収の壁についてですが、このままでは時代錯誤になると思うので、私の意見をまとめます。
年収の壁にはいくつか種類があります。中でも、私が問題だと思うのは、今話題の103万円の税の壁よりも、手取りが大きく減る社会保険料の壁の106万円と130万円の方が影響が大きいと考えます。
日経新聞のこのあたりの記事を読んでいただけるとわかると思います。
https://nikkei.com/article/DGXZQOCD311SQ0R31C24A0000000/
https://nikkei.com/article/DGXZQOUA308TX0Q4A031C2000000/
私が調べられていないだけなのかもしれませんが、社会保険の106万円の壁と、130万円の壁について、今の政治状況で、どのような論点があがりそうなのかは分かりません。ただ、103万円の壁の議論のように、この壁の金額をあげるという方向にもしなってしまったら、ナンセンスだと思います。
年金に1号、2号、3号3種類あります。1号は自営業者の方など、2号は正社員の人(適用拡大中)など、3号は主婦の人などが中心にはいっています。
大きく稼ぐと第3号被保険者から抜けなきゃいけなくなるから働くのを控える人がいます。主婦年金と最近報道されているものです。一見得しているように思うかもしれませんが、今生活保護の対象になっている人の中には、高齢の女性が多くいます。女性は結婚や出産で非正規になったり、子育てをしながら働くのは難しいからと、仕事をセーブするケースがあり、その際にだったら、壁の中で第3号被保険者の中で働こうと考える人がたくさんいます。厚生年金に加入していないことから、高齢になった時に多くの女性が困ります。
壁を気にせず働き、厚生年金に加入することで、老後のもらえる年金額も増やすのが、高齢女性の貧困を防ぐためにも必要だと思います。男女の賃金格差が大きい日本で、このような制度は、男女格差をなくせない一因になっています。
もちろん当事者の方の中には、少しでも今お得な方がいいと考え、壁の金額の上限をあげることを希望される方もいらっしゃるでしょう。でも、金額をあげても、またその金額内で就業調整してしまえば、男女の賃金格差は残りつづけるでしょう。その方々がこんなはずじゃなかったと、将来の年金額を受給する時になって気づくのは、遅いと思います。
政治が示す方向性、制度や法律には、どんな未来を作りたいか、どんな社会なのかというメッセージが込められています。だからこそ、男女の格差を助長してしまっている年収の壁の金額をあげるではなく、そのような壁なんていうものはそもそもなくすのがいいと思います。だから、私は3号被保険者をなくすべきだと考えています。今政府は厚生年金の適用拡大をすすめており、この方向性に私は賛同しています。私は年金部会の委員をしており、年金の専門家ではありませんが、年金の勉強をしており、有識者の方との意見交換や、年金について当事者の方や若者からの多くのヒヤリングをしてきました。
もし、政治がこの壁に注目するのであれば。私は、この3号被保険者にこそ切り込んでほしいと思います。これは、長らく自民党政権では、古い家族観に縛られ、夫と専業主婦をモデルにしているからこそ、3号は時代にあっていないことはわかるけど、自民党の政権下では難しいのではないかという意見を複数の方から聞きました。
もしこれを実際に政治の力でやろうとすると難しい。これは複雑な制度で、将来を見据えての判断であり、正論だけど、当事者の人は今は損するように感じるから(実際は貧困を防ぎ、手取りを増やせる)反発も招く。
だけど、私は未来にどんな社会を残すか考え、嫌われても正論をいい説得する。そんな政治を期待しています。
自公政権が厳しい環境だからこそ、年収の壁をやるならここに踏み込んでほしいです。
私が知らない情報や、アップデートしきれていない情報がある場合や間違っている場合などあれば、随時補足や訂正などいれます。
(※本当に育児や介護におわれ、生活に困窮している人などに対しては3号においても配慮が必要だとは考えています。)
税の壁についても意見はありますが、こちらの方がお伝えしたかったので、取り急ぎまとめました。