キメラアント編のこと
蟻編は全編に渡って表裏とか二面性というものが散りばめられてる。
異形のキメラアント達に人間だった頃の記憶があったり、不気味極まりないパームが実は美女だったり、ヤンキー小僧みたいなナックルが大人でクレバーで現実的な一面を持っていたり、メンタル激弱シュートが追い込まれるほど美しいまでの強さを発揮したり。
討伐隊はゴンやキルアも含めて、超人的な力でサクサク成功する人が誰もいなくて、みんなどこかで頭ぶつけたり地に膝ついたり、挫折や無力感や劣等感を抱える。
あのネテロ会長ですら、自らの命を犠牲にしなければ王を倒せなかった。
愛らしい顔に似合わない残忍さを持つピトー、野獣のようでありながら理性的な顔を併せ持つユピー、美麗なルックスとウザいノリとナックルを絶望させた蟻の本性を持つプフ。
人間とは全く異質な蟻の王でありながら、コムギとの間に温かい情を育みその膝で逝ったメルエム。
この物事やキャラの表と裏が綾織りになった構造のせいで、単純明快にスカッとしない。読者・視聴者まで複雑に絡み合った感情の渦に否応なしに巻き込まれる。
とてもとてもしんどい話なのに、それに耐えきった後には感動しかなく、何度も反芻したくなるような宝物になる。
キメラアント編ってそんな感じ。もし周りにあのグロテスクさやストーリーのしんどさから避けている人がいたら、どうか私を信じて完走してみてとお伝えください。