インド映画『Dagadi Chawl』感想
『Dagadi Chawl』は2015年に公開されたマラーティー語のアクション・スリラー映画。
主演にはアンクシュ・チャウダリ、マカランド・デシュパンデ、プージャ・サワントの3人がクレジットされています。
ここからは英語字幕すらないものをWikipedia他からかき集めた僅かな情報を頼りに見た感想なので、内容についてはふわっとしている(もしかしたら細部は間違っている)ことをご了承ください。
ムンバイが街中の犯罪者の間で起こる継続的なギャング戦争に悩まされていた1996年。滅法ケンカが強く交渉事にも長けた主人公のスーリヤは、物騒な街の中で仲間達の兄貴分として、時にヤンチャしつつもそこそこ平穏に暮らしていました。
祭りの日に出会ったソナルと順調に愛を育みますが、彼女に絡むチンピラを叩きのめしたことから彼らにつけ狙われるようになります。
それはだんだんエスカレートしてゆき、まともな日常生活どころか親の葬儀まで邪魔され、追い詰められた彼は友人の手引きで仲介者を紹介してもらい、「ダディ」と呼ばれる人物に直談判に行きます。
「ダディ」の表の顔は敬愛される指導者ですが、その実態は街の多くのギャングを支配するドン。警察ですら彼とズブズブで裏金で部下を釈放させたり、例え逮捕され裁判になっても、脅迫を用いて証人を黙らせたりします。
スーリヤを狙う連中も、彼の側近とその手下でした。
平穏な日常を取り戻すために交渉に行ったのに、逆にダディの組織に引き込まれてしまうスーリヤ。やがてはダディの側近にまでなったスーリヤは、まっとうな人生を取り戻せるのか─?
というストーリー。
120分の映画ですが、テンポよく話が進み、何を言ってるのか全くわからずに見ているにも関わらず「もう終わったの?」という体感時間と感想。
いや、面白かった!これは極道ものやマフィアもの好きならきっと気に入ると思います。
何しろダディが怖い。この怖さを日本人に伝える的確な表現を私は既に知っています。
マカランド・デシュパンデのことを「おひょいさん(藤村俊二)に似てる」と言う声を何度か目にしましたが、そのおひょいさんが北野武作品で冷酷なヤクザの組長をやっている映画だと思ってください。そのイメージでだいたい合ってます。
おひょいさんが「ミスは決して許されない」と言って、手の一振りだけで部下に誰かをリンチさせたりしてたらどうです?怖いでしょう。
他に私が気に入ったのは音楽。特にアンクシュ・チャウダリが演じるスーリヤがお祭りのシーンで歌う『Morya Morya』が秀逸。とても映画の雰囲気に合っていて、ずっと耳に残ります。
あと、アンクシュまつ毛長ッ!
「ダディ」ことアルン・ガウリという役は、80年代から90年代にかけてギャング活動で知られ、ギャングから政治指導者に転向した実在の人物がモデル。
アルン・ガウリ役のマカランドの名前は「ダディ」として、公開直前まで伏せられていたようです。
実はアルン・ガウリは現在も存命中の人物ですが、映画のマカランドの姿はかつての本人にそっくりだと評判になったとか。
映画の公開後、マカランドは街で会う子供やお年寄りから「ダディ」と呼ばれるようになったそうです。
実際のアルン・ガウリを知っている人に会った時など、彼はマカランドの足を触ろうとした(インド沼の人には説明不要でしょうが一応、ヒンドゥー教徒が目上の人に敬意を表す挨拶)とインタヴューで語っています。
そりゃあこんなの続編出るわと納得の作品でした。
「チュキラ・マフィ・ナヒ(間違いの言い訳は通用しない)」