第1章 医局と臨床、研究 『中堅放射線治療医が見てきた医局と資格 (仮)』の草案
過去の内容はこちらのマガジンに保管しています。
今日は第1章。医局とかいう謎の組織に迫ります。
本文はここから。
第1章 医局とは
1-1 医局の定義
医局とは何でしょうか?
「医局」と聞くと、真っ先に想像されるのが「白い巨塔」ではないでしょうか。医局という閉鎖的な空間での、医者どうしの複雑な人間関係や権力争い、派閥の対立が描かれていますよね。いや、正直あんな怖いところでは働けませんよ。
とはいえ、実際にはどんな組織か、外部からは見えにくいのが実情だと思います。
医局とは、単に病院内における、医師用の控室を指す言葉でもあります。本書で述べる医局とは、大学や大学病院に存在する医師の集団のことを指します。私も現在、群馬大学腫瘍放射線学の医局に所属しています。
そんな医局ですが、定義はあるのでしょうか。
私のイメージでは、大学病院で同じ診療科目を担当する医師の集団だと考えていました。とくに法律などで医局が定義されているわけではありません。しかし、定義について探してみると、ある事件の判決文に辿り着きました。その文章を抜粋します。
『医局とは、大学医学部の講座に対応して存在する医師の団体であり、大学の附属 病院などの右講座に対応する診療科では、医局の場において教育、研究、診療等が行われている。医局の最高責任者は教授であり、その下で医局長が実務的な運営を 行っている。』
この文言は、奈良県にある榛原町立榛原総合病院の医師が、町長から一方的に辞職させられ、その取り消しを求めた裁判での判決文に書かれています。ここで示された医局の定義は、その本質を的確に表しているように感じます。
ポイントは、大学医学部内の同じ診療科の医師集団であること、診療だけでなく教育や研究なども行っていること、医局のボスは教授であることです。
ひとつずつ確認してみましょう。
まず、医局は大学医学部の講座の中に存在しています。
ここでいう講座とは、たとえば消化器外科学講座や、循環器内科学講座など、診療科とリンクした名称になっていることが多いです。講座は、ときに教室とも呼ばれます。実際に私が所属している医局は、群馬大学 腫瘍放射線学教室という名称です。
そして、医局に所属する医師たちによって、教育、研究、診療等が行われています。ここで述べられている臨床、研究、教育こそ、私たち医師の三大業務です (『若手医師のためのキャリアパス論』 岡西 徹 著)。
臨床とは最もイメージがしやすい仕事です。いわゆるお医者さんの仕事で、患者さんの診察、検査、治療などが臨床の仕事の代表格です。一般には医者の仕事は、この臨床業務に集約されると思われがちですが、実は一部でしかありません。この臨床業務のほかに、研究と教育も大切な仕事です。
医学研究なしに、医学の発展はあり得ません。ですから、研究も私たち医師にとっては重要な業務です。
お医者さんって研究もしてるの?と思われるかもしれません。私たち医師は学会にも所属しています。学会については後述しますね。学会は通常、毎年1回は学術大会を開催します。各学会に所属する医師たちは、その学術大会において自らの研究を発表しています。
私は日本放射線腫瘍学会に所属しています。日本放射線腫瘍学会は、毎年秋に学術大会を開催しています。私も若い頃は毎年発表していました。振り返ってみると、2012年から2019年まで毎年発表していました。もっと長い期間発表を続けている先生もたくさんいます。
2023年に開催された日本放射線腫瘍学会の学術大会では、応募演題数は609でした。演題とは、発表する研究内容やテーマのタイトルを指します。通常、ひとつの研究には複数の人が関わっています。日本放射線腫瘍学会の会員数は4,268人です。仮にひとつの演題に5人関わっていれば、609の演題には延べ3,000人以上が関わっていることになります。となると、たったひとつの学会を見ただけでも、相当の割合の医師が研究に関わっていることがわかります。
そして教育です。
(1610字)
急に疲れたのでここまでにします笑
続きはまた今度。
読んでいただきありがとうございました。
髙草木