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第2章 学位と私 『中堅放射線治療医が見てきた医局と資格 (仮)』の草案

過去の内容はこちらのマガジンに保管しています。

今日は私の学位に対する意見についてまとめていきます。

本文はここから。


 では、私個人としては、自分がとった学位をどう考えているのでしょうか。

 すでに述べたように、私は大学院の卒業に丸5年間を要しました。学費の総額はおよそ300万円。決して安い金額ではありません。さらに、論文がなかなか書けずに過ごしていた心理的な負担感は、今思い出しただけでも嫌な汗が出てきそうです。

 こうした労力を割いて取得した学位に、どれだけのメリットを感じているのでしょうか。

 まず肩書きに関してです。学位を取ってすぐ、勤務先の総務課にかけあって、名刺を変更してもらいました。もちろん、その名刺には「医学博士 髙草木陽介」の文字が。やっぱり医学博士という言葉には、それなりの説得力がありそうです。さらに、病院のホームページに掲載されている資格欄にも「医学博士」の文字を入れてもらいました。
 肩書きの効用はどれくらいあるのか測りかねますが、それでも学位を保有していると周知したくなってしまった、ということですね。職場が変わった今も、私の名刺には、「医学博士」の文字が入っています。

 第二のメリットとして挙げた、研究の基礎が学べることはどうでしょうか。
 断言します。確実に私の役に立っています。大学院を卒業してまもなくは、もう論文は書かなくていいやと思っていました。しかし実際には、数年後にまた書きました。その後前職では、4年間で13本の論文を発表することができました。さらには自分で会得した論文の書き方を、拙著『論文書け!って言われても… 若手医師のための医学英語論文の書き方』にまとめ、講演の依頼もいただきました。
 大学院で学んだことが、今の私の礎になっていることは疑いようがありません。とはいえ、大学院でなくても、研究や論文執筆に取り組むこともできますから、大学院に入らなければ経験できなかった、とは言い切れません。そうは言っても、どうせ研究して論文を書くなら、学位がもらえる大学院のほうがお得かなとは思うわけです。

 では、第三のメリットであるポストについてはどうでしょうか。
 私は医局に所属しながらも、医局人事から外れているのは先に述べた通りです。大学病院での勤務ではありません。さらに、いま私が所属している病院も、学位は部長職に就くための条件ではありません。したがって、学位を持っているからポストを得られたという実感は皆無です。
 よく、学位は「足の裏の米粒」と揶揄されますよね。それは、取らなければ気になる、しかし取っても食えないためだと言われます。確かに、学位の取得による直接のメリットは感じにくいと、私も思わざるを得ません。でも、学位を持っていないことは気にならないので、そのあたりはスッキリした感じではあります。まさに足の裏の米粒。

 収入面ではどうでしょうか。前掲の卒後年数と年収のグラフに、学位取得時期も入れてみました。

 専門医と学位の取得によって、年収は増加しているように見えます。ただ、学位の有無による比較ができないので、あくまでも参考ですね。


 学位に対する私の意見をまとめます。学位とは、学術面において、最低限の知識や経験、技術を持っている証明です。ただし、持っているからと言って、目に見える利益があるとは言い難い性質があります。専門医と同様に、学位を保有していることで、将来のキャリアの選択肢を広がるかもしれません。
 しかし、どうやらあまり人気がない資格なのかもしれません。人気がなくなって、医学博士を持っている人が減ってきた場合、医学博士の希少性が高まることも期待できるかもしれません。後で取ろうと思うと面倒ではありますから、取れる環境にいるならば取っておいても損はない、というのが私見です。

 よし、それなら学位を取っておこうかな、と思ったとき、私たちは研究や論文を避けて通れません。ここからは、研究や論文についても考えてみましょう。 

(1400字)

累計文字数
はじめに 800
医局と臨床、研究 1600
医局と教育 1200
医局と人事 2400
医局の構成員 800
医局に入る研修医の割合 700
医局のメリット 1800
医局のデメリット、人事 900
医局のデメリット、人間関係など 1300
医局じゃなければ 1500
医局と私 1900
医局のまとめ 200 (医局関連で14300字)
専門医とは 1500
専門医を目指す研修医は90% 400
専門医のメリットとデメリット 1100
専門医をみんな持っている 1600
専門医のまとめ、学位へのつなぎ 400
学位とる研修医は30% 600
学位のメリット 1000
学位のデメリット 1400
学位と私 1400

合計 24500

次回は研究や論文について。
これは、前回の私の本に重なる部分が多くなりそうですね。できるだけサラっと書いていこうと思います。


読んでいただきありがとうございました。

髙草木



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