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第1章 医局のメリット? 『中堅放射線治療医が見てきた医局と資格 (仮)』の草案

過去の内容はこちらのマガジンに保管しています。


今日は第1章の続き。
私が見てきた医局のメリットについて書いていきます。

本文はここから。


 医局に入ろうと考えている初期臨床研修医は80%近くもいます。それだけ多くの研修医が入局を考えていることには、何か理由があるはずです。おそらく、何らかのメリットがあると考えているからこそ、大学の医局に所属することを選んでいるのでしょう。
 では、そのメリットはどんなことがあるのでしょうか。

 私が考える医局のメリットは、大きく4つです。専門医を取得できること、学位を取得できること、人脈を得られること、研究の環境が整っていることです。
 この4点について、これから述べていきます。


 まず第一に専門医を取得できます。専門医資格の是非については、第2章で考えていきます。

 いま現在、医師が新たに専門医を取得するためには、日本専門医機構に専攻医として登録し、同機構の定める専門研修プログラムによる研修を受ける必要があります。専門医研修プログラムは、どこの病院でも設置できるわけではありません。同機構が定める要件を満たす必要があります。

 多くの大学病院では、研修の機関病院として専門医研修プログラムを持っています。ですから、初期臨床研修医を修了後に大学に入局すれば、専門医研修プログラムに沿った研修を受けることができます。これによって所定の要件を満たせば、専門医を取得できます。


 第二に、学位を取得できます。ここでいう学位とは医学博士号です。医学博士の資格の意義についても、第2章で考えてみますね。

 簡単に学位について整理しておきます。実は私たち医師、いや医師に限らず大学を卒業した者は「学士」という学位を取得したことになります。四年生大学では、その後2年程度の修士課程を経て「修士」という学位を取得します。その後、博士課程に進み、それを修了したときに「博士」という学位がとれます。

 医学部では特殊で、6年制大学では、修士課程を飛ばして、直接博士課程に進むケースが多いです。通常、私たち医師呼ぶ「大学院」とは、医学博士取得のための博士課程を指します。その結果取得できるのが、医学博士と呼ばれる学位です。こうした背景から、医師の世界では学位とは医学博士を指す言葉として使用されています。

 医局は独自の博士課程プログラムも準備しています。ですから、医局に所属すれば、医学博士を取得することも可能です。


 第三に、人脈を得られます。医局には、上は教授から、下は専攻医まで所属しています。それだけではなく、すでに現役を退いた医師、あるいは将来入局してくる医師もいます。

 医局のメリットは、同世代の医師とのつながりもできますが、同時に上の世代や、若い世代とのつながりも作られます。横にも縦にも広がる人脈は貴重です。医局の先生が、別の医局の先生とのつながりを持っていたりすると、さらに人脈は拡大していきます。

 医局に所属するだけで、こうした人脈を得られるのはありがたいことですよね。私が群馬大学だけでなく、埼玉医科大学でも非常勤講師をやらせてもらっているのは、他ならぬ医局の人脈のおかげです。


 最後に、研究の環境が整っていることです。メリットの2番目で述べたように、医局は大学院のプログラムを持っています。大学院を卒業するためには、研究を行い、その成果を論文にしなければいけません。ですから研究するための環境が整備されています。

 大学では、各医局で独自の研究室が準備されています。
 放射線治療分野での研究は主に3つの分野から成ります。1つめは、細胞や実験動物に放射線を照射して、放射線の影響を明らかにする生物部門の研究です。2つめは、治療精度の向上や副作用の低減を目指し、照射技術や治療計画の最適化に関する研究を行う物理部門です。3つめは、臨床研究です。放射線治療を実施した患者さんの治療効果や副作用を検証して、よりよい放射線治療の提供を目指します。

 3つめの臨床研究は、特別な研究装置は必要としないことが多いです。一方で生物研究や物理研究は実験が必要ですから、実験用の装置や研究室が不可欠です。大学病院においては、研究は重要な業務の柱です。そのため、一般病院では準備しにくい研究の環境が整備されています。

 また、診療科独自の研究室だけではなく、診療科によらず横断的に利用できる研究設備も大学にはあります。私たちのイメージに違わず、研究の環境については大学に優越性がありそうです。


 以上のように、医局に所属するメリットは、専門医や医学博士を取得できること、それに付随する研究環境、そして人脈です。改めて全体を眺めてみると、医局とは悪いものではなさそうです。

 反対に、デメリットはどんなことがあるでしょうか?

(1800字)


累計の文字数

はじめに 800
医局と臨床、研究 1600
医局と教育 1200
医局と人事 2400
医局の構成員 700
医局に入る研修医の割合 700
医局のメリット 1800

合計 9200

次は医局のデメリットです。
やっぱりネックは人事でしょうかね。

読んでいただきありがとうございました。

髙草木



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