見出し画像

第1章 医局じゃなければ?:人間関係と医局の仕事 『中堅放射線治療医が見てきた医局と資格 (仮)』の草案

過去の内容はこちらのマガジンに保管しています。


今日は第1章の続き。
医局に入っていなければ?の話です。

本文はここから。


 ここまで、私がみてきた医局の良いところ、良くないところについて考えてきました。医局に入っていれば、専門医をや学位を取得でき、人脈を得られ、研究環境も整っています。一方で人事権を他人に預け、人間関係や医局の雑務も負担になるかもしれません。

 では、もし医局に入っていなければどうでしょうか。

 医局に入っていなくても、専門医の取得は可能です。専門医になるためには、その研修プログラムを設けている病院に勤務すればよいので、自分自身で直接そうした病院に就職すればよいのです。必ずしも医局に所属する必要はありません。

 医局に入っていなくても、学位の取得も可能です。大学院だけ入れてもらい、論文さえ仕上げれば理論上は医学博士を取得できます。

 医局に入っていなくても、人脈は作れます。それぞれの就職先での新たな人脈を築けます。いまやSNSもあるわけですから、実際に会わなくても人脈を築ける時代になりました。

 医局に入っていなくても、研究はできます。例えば、がんセンターのように臨床だけではなく、研究も重要視している病院に就職すればよいのです。

 そして、医局に入っていなければ、自分の勤務条件を自分でコントロールすることができます。働き始めるまで業務の詳細や給与がわからない、などということはありません。

 医局に入っていなければ、人間関係で苦しむようなことがあっても、その病院を退職すればいいだけです。自分で自分の人事権を行使して、また新たな職場を探せばよいのです。

 医局に入っていなければ、医局の業務もありません。当然ですね。自分の時間を自分の思う通りに使えます。


 こうして見てみると、医局の意義は徐々に低下してくのも致し方ないように見えます。それにも関わらず、いまだに80%近い研修医の先生が医局に入ろうとしています。なぜでしょうか。

 まず、専門医について考えます。医局に所属せずに市中病院で専門医の取得を目指す場合、そもそもその病院に採用枠があるかどうかが問題になることがあります。

 例えば、後期研修医として3年間のプログラムに加入します。それによって、基本領域専門医 (たとえば放射線科専門医) をとれますが、サブスペシャリティ領域の専門医 (放射線治療専門医や放射線診断専門医) を取得するためには、さらに2年間の研修が必要です。その時点で採用枠があれば、引き続き研修できますが、病院に採用枠がない場合は、改めて2年間の研修ができる病院を探さなければなりません。


 また、医局に所属しなくても学位をとる方法は難易度が高いです。学位をとるには大学院に入学して、何らかの研究をして論文を作成する必要があります。通常、大学院は医局が運営しており、ほぼ同じ組織です。大学院生の指導も必要となるので、部外者を大学院だけ入学させて学位をとらせることは、医局側のメリットは多くありません。

 ですから、医局に所属せずに学位を取得しようと考える場合、なんらかの独自のコネクションが必要になります。


 そして、人脈についても、私のように引っ込み思案の人間が、積極的に人脈を広げることは困難です。ですが、医局にいれば、なかば自動的に人脈を得ることができます。

 研究の環境も、医局に所属すれば大学の施設を利用できます。ですから、研究の環境も、入局することによって自動的に得られます。


 ですから、医局に所属することで、人事という最大の懸念点はあっても、医師としてのキャリアを形成しやすい環境を得られます。人事権を差し出して、安定したキャリア形成の機会を提供してもらうことが、個人にとっての医局の捉え方だと言えそうです。このように総合的に医局を考えたときに、現状では得られるメリットのほうが高いため、研修医の8割が入局を考えているのだと思います。


 では、医局に対して、私はどう考えているのでしょうか。これまでも主観的な話ばかりでしたが、さらに具体的な経験について踏み込んでいこうと思います。

(1500字)


累計文字数
はじめに 800
医局と臨床、研究 1600
医局と教育 1200
医局と人事 2400
医局の構成員 800
医局に入る研修医の割合 700
医局のメリット 1800
医局のデメリット、人事 900
医局のデメリット、人間関係など 1300
医局じゃなければ 1500

合計 13000

思ったより話がふくらんできた感じがします。
そろそろどこかで風呂敷をたたまないと。
そして医局に対する主観は注意深く書こうと思います。なにせ実名なので。

読んでいただきありがとうございました。

髙草木



いいなと思ったら応援しよう!