第1章 医局のデメリット:人間関係と医局の仕事 『中堅放射線治療医が見てきた医局と資格 (仮)』の草案
過去の内容はこちらのマガジンに保管しています。
今日は第1章の続き。
私が見てきた医局のデメリットについて書いていきます。
本文はここから。
第二のデメリットは人間関係です。これまで見てきたように、医局は教授を頂点とし、同じ診療科に所属する医師によって構成されています。メリットの一つとして、人脈の形成を挙げました。確かに学年の近い医師との横の交流だけでなく、上の世代や若い世代も含めた縦のつながりが医局にはあります。
とはいっても、あくまでも大学に所属する、または所属していた同じ診療科の医師ですから、どうしても人間関係は限定されます。とくに医局に所属して実際に働く医師は多くありませんし、教授を頂点とした序列もはっきりしていますから、閉鎖的な側面もあります。
ベストセラーとなった『嫌われる勇気』(岸見 一郎, 古賀 史健 著) においても、「人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである」と指摘されています。医局という閉鎖的な空間の中での対人関係においては、人間関係はときに医局員にとって深刻な悩みになることがあります。
幸い、私は人間関係にはさほど悩まされずに過ごせています。ですが、上司や周囲の医師と折り合いが悪く、悩んでいる医局員も見てきました。人数は多くありませんが、退局した医局員もいます。退局の直接の原因はわかりませんが、もしかしたら、医局内の閉鎖的な人間関係も一因かもしれません。
第三のデメリットは、医局特有の業務があることです。
医局長の仕事については既に述べましたが、私のような役職のないただの医局員でも、医局の運営に関する特有の業務があります。これは、医局に所属するが故の付加的な業務です。
もちろん、大学病院ならではの仕事として臨床試験や治験関連の臨床や研究業務が多かったり、学生や研修医への指導機会が必ずあります。しかし、先にも述べたように、私たち医師の仕事は臨床、研究、教育ですから、それらの仕事の質が異なるだけです。
医局特有の業務とは、例えば年に1回程度開催される医局会の総会の準備や参加があります。総会では、医局の運営方針に関する説明、医局の会計報告や予算案の承認、退局者や新規入局者の報告などが行われます。医局員は、医局の運営のため医局費を支払っています。私の所属医局では、年間数万円です。この支出も医局に所属するが故に発生します。
そのほか、同門会総会の運営や参加もあります。同門会総会で、現時点で医局員として活動している医師だけでなく、退局された大ベテランの先生方もお呼びして、医局の活動成果の報告や、懇親会が行われます。
また、医局が学会を主催する場合には、医局員は当然駆り出されます。その他、医局主催の忘年会や懇親会、勉強会などが開催されるので、適宜参加を促されます。もちろん、新規入局者の勧誘も医局の大切な業務です。
このように、医局に所属していると、医局という組織運営に関する業務があります。これらは医局の運営のため必要ではありますが、業務負担という観点からみれば、医局に所属することで発生するエクストラな業務です。
(1300字)
累計文字数
はじめに 800
医局と臨床、研究 1600
医局と教育 1200
医局と人事 2400
医局の構成員 800
医局に入る研修医の割合 700
医局のメリット 1800
医局のデメリット、人事 900
医局のデメリット、人間関係など 1300
合計 11500
次はいちど医局についてまとめたあと、「医局じゃなければ」の話に続きます。
読んでいただきありがとうございました。
髙草木