海の哺乳類が、汚れた海で生き残るために必要な遺伝子を失っていた
イノカチームでは日頃から、水に住む生き物をめぐる研究を調査しております。
本日はそんな中から、海に住む哺乳類に関する研究を紹介します。
内容は
「海の哺乳類が、汚れた海で生き残るために必要な遺伝子を失っていた」
というものです。
海洋哺乳類は農薬に耐性を示す遺伝子を失った
イルカ、マナフィ、ジュゴン、アザラシなどの海にすむ哺乳類は、もともと陸上で生きていた哺乳類を祖先としていました。
今回の研究では、その陸上で過ごしていた哺乳類たちが、海で生きるために必要なPON1という遺伝子を失っていたことがわかりました。
この遺伝子は農薬などに含まれる有機リン化合物に対して耐性を示すものなので、陸上に生きる全ての生物が持っているのですが、
イルカなどはPON1を持っていないのです。
では一体、なぜこんな大事な遺伝子を失ったのでしょうか?
PON1は海洋哺乳類にとっては邪魔だった
イルカなどは海に長時間潜るため、膨大な量の酸素を一度に吸い込み、血液中にたくさんの酸素を溶かしこみます。
この時にPON1遺伝子が存在すると、酸素を体内に取り込むのを邪魔する。だから、海洋哺乳類はこの遺伝子を手放したのではないかという推測がされています。
その当時にはイルカがその進化を遂げた頃には、農薬なんてものが海の中にはいってくることがなかったため、彼らはこの遺伝子を不要なものとみなして手放したのでしょうね。
この研究の可能性
ではこの研究は、環境破壊は良くない、海洋哺乳類が絶滅してしまう、という暗い話で終わるのか、というとそうではありません。
実は、他の遺伝子によって農薬が体に蓄積しないようにしている可能性があるというのです。
皮肉な話ですが、人間が作り出した過酷な環境で生き残るため、多くの生き物が新たな進化をしているのです。
海洋哺乳類たちもその例外ではないと研究者たちは考えています。
実際に、農地の近くで生きているマナティーがいることからも、何かしら農薬を分解する、より強力な遺伝子を彼らが手に入れている可能性が十分にあります。
さらにこの研究は、人間の医療にも役立てられる可能性を秘めています。
いくつかの農薬は、人の子供に脳損傷を起こす可能性などがあるのですが、この研究が進めば、いずれそれらの治療にも役立てられるかもしれません。
アクアリウムは、人間が作り出した特殊な環境の代表とも言えます。
そんなアクアリウムの中で独自に進化した魚たちも非常に多いはずでそれらの魚たちの特徴が今後遺伝子技術によって段々と明らかとなっていけば、
人間の生活に直接関わってくるような発見があるかもしれません。
生き物の進化は非常に興味深いですね。