アーツ・ベースド・ファシリテーター養成講座で過ごした時間
2024年1月から、プレイバック・シアターラボ主催のアーツ・ベースド・ファシリテーター養成講座(ファシ講)第4期が、東京の中目黒で開講する。わたしはラボ研究生として事務局を担当させていただけることになった。
わたしはこの講座の第3期(2023年1〜6月)修了生だ。ファシ講での経験は受講生一人一人違っていると思うが、わたしにとってはファシ講はどんな時間だったのか、思いついたところからポツポツと書いてみる。
ゆっくり近況を語ることからはじまる時間
毎回、近況報告(チェックイン)から始まる。日常のちょっとしたことから、人生における重大な出来事まで様々な話が行き交う。どんな話でも講師のお二人はじっくりと耳を傾けてくれる。心に浮かんだことを言葉にし、それを誰かに大事に聴いてもらえると、今までとは少し違う見え方や感じ方になっていく。そんな時間が定期的にあることがありがたかった。
今までの歩みが統合されていく時間
生まれてから今日までの歩みを、様々な角度からふりかえる時間があった。わたしの場合、夫の転勤が何度もあり、その度に家族以外の全てを手放してきた感覚があった。でも丁寧に一つ一つの出来事から自分が何を学んできたのかに気づいていくうちに、ブツ切りになっていた様々な経験がつながりを持ちはじめ、今までの人生が一つの大きなまとまりとして統合されていった。
仲間から学び合う時間
受講生は、ドラマワークを長年続けてきた大先輩から、今まさにチャレンジしはじめた人までいた。わたしのように芸術の素人もいれば、劇団で演劇をやっていた人、音楽の専門性を持っている人、落語をやっている人など、アートの経験も様々だった。年齢や経験の違いを超えて、いやむしろお互いの違いから学び合う時間だった。
書く時間
毎回の感想を書く課題が出る。感想を書くために、毎回の講座後数日間はそこでの体験を反芻する。自分にとって印象的だったことは?その時自分はどう感じていたんだろう?あそこでちょっと引っかかったのはなんだったんだろう?ぼんやりと漂っていたものが、少しずつ言葉として形作られていく。
書いた文章はウェブ上の共有フォルダに保存するので、受講生同士で読み合うことができる。自分が書いたものを誰かが読んでくれるというのは、わたしにとっては励みになった。一人でも読んでくれる人がいると書く甲斐がある。そう思えたのは、文章の上手下手が問われないことや、内容について決して評価されたりしない安心感があったからだろう。ただただ自分の中で動いたことを忠実に言葉にしていく時間だった。
実践してみる時間
ファシ講の後半では、各自でプログラムを立案し、実際にファシリテーターとしてワークショップを行う。自分はどんな場を作りたいのか?何をやりたいのか?考えるところから始まる。
企画に行き詰まったら、講師の羽地さんや由梨さんに個別に相談に乗ってもらうこともできる。わたしも由梨さんにじっくり話を聞いてもらった。その贅沢さをどう表現したらいいのかわからない。ぜひ実際に由梨さんに聴かれる体験をしてみていただきたい。そのためにファシ講に参加してもいいくらいだと思う。
とにかく自分をじっくり見つめた上でプログラムを用意し実践する。うまくいったかどうかはあんまり問題じゃない。ドキドキしながらも、やってみるってことが大事だ。やってみたら、わたしはもっとやりたくなった。もっとやってみたいという気持ちがだんだんと定まっていった。
終わりに
この講座を受けたことで、わたしの人生は思いがけず大きく変わっていった。しかしそれは今振り返って気づくことであって、当時はそんな風になるとは思っていなかった。むしろ講座を受けただけで何かが変わるなんて期待は持っていなかった。ただ、せっかくの機会だからこの時間を大事にしようと思っていた。
今でも「これを受けたらこうなる」なんて単純なことは言えないと思っている。そもそもワークショップは、参加する一人一人が何を感じ、何を考え、何に気づくかは、誰にも予測できない場だ。でも、それぞれが感じたことを素直にありのままに表現し、分かち合う時、そこでの学びは豊かなものになる。予定調和ではない生き生きとした学びが立ち上がる。ファシ講は、わたしにとってそういう場だった。
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