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【きいてみる稽古】聞くのが上手くならない稽古

4月の「きいてみる稽古」は、岩橋由梨さんを交えてのふりかえり会を3回行った。今回は、今月のふりかえりのふりかえりを書こうと思う。


聞くのが上手くならない稽古

由梨さんは時々「この稽古をしても、聞くのが上手くなったりはしない。その人の聞き方は変わらない。」と言う。面白いことを言うなぁと、いつもわたしは隣でニヤリとしてしまう。そして、決して聞き上手になることのない稽古を、みんなで大真面目に嬉々として取り組んでいることが、なんだかおかしくって笑えてくる。


期待と不安と裏切りと

事前に録音した15分間の対話の逐語録を起こすとき、わたしはいつも「わたし、なかなかええや〜ん」と思っている。「これ、結構褒められたりして」と思い、「たかさん、いいね〜」と言われるシーンが脳裏に浮かぶ。(そんなこと言われたことは一度もない。笑)

そうやって逐語録を準備してふりかえり会に臨むのだが、直前にいつも感じるのはかすかな不安だ。やっぱりダメ出しされるんじゃないか?という不安、ではない。対話が地味すぎて、由梨さんがコメントすることがないんじゃないか?という不安だ。ふりかえり会は2時間もあるのに、途中でしゃべることなくならないかな?と、毎回ちょっと心配になる。

いざ、ふりかえり会が始まる。まず対話の録音をみんなで聴く。それから、由梨さんが逐語録を読み上げながら随時コメントをしたり、聞き手語り手になった我々が感じたことや疑問を話したりする。

わたしの予想は毎回裏切られる。「もしかして褒められちゃうかも」なんて思っていたのが、実際には全っ然聞けてなかったことが露呈し、わたしはその度にびっくりし(笑)、なるほど〜!確かに〜!と目を大きく見開いて唸り、みんなで大笑いする。時間は2時間では全然足りなくて、いつも超過してしまう。終わる頃には、いや〜面白かった〜!すっごい勉強になりました〜!と言いながら散会となる。


解像度

ふりかえり会をする前は、逐語録はなんだかのっぺりとしている。コメントすることあるかな?と心配するくらいだから、相当のっぺりとしている。

でも、由梨さんがコメントするにつれて、のっぺりとしていた逐語録がどんどんと立体的になっていく。15分間の間に一体何が起きていたのか、語り手が何を語っていたのか、聞き手はそこでどのような応答をしていたのかが、像を結び始める。

ついさっきまで自分には見えてなかったものが徐々に見えていく、この解像度が上がっていく感じが好きだ。


解像度と朗読

ある時、稽古中にふと「あ、そうだった、由梨さんは朗読劇の指導者/演出家だったんだ。言葉や文章を声に出して読むことを、長年取り組んでこられた方だったんだ」と思い出した。

語りの「言葉の細部」にまで意識が巡らされていて、その言葉を発している人間の「声の質感」への感度や理解が深い。そんな由梨さんの背景には朗読劇があったんだと、ちょっとだけ謎が解けたような、なんとなく腑に落ちたような、そんな気がした。


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