食卓革命
嚥下対応ができる食事は、乳幼児や高齢者に限らず、どの年代にも必要とする人たちがいるって、知ってる人がどのくらいいるんだろ❓
ペースト食、きざみ食と聞くと、何かしらネガティブなイメージを持つ人は多いと思う。
なんらかの事情で、普通のごはんを食べられないから、刻んだり、ペースト状にしたりする。食べなければ、栄養とれないから…多少美味しくなくなるのは仕方ないよね…そんなふうに思ってない?(私もそうだった…)
ほとんどの場合、既存の食事をどうしたら取り込めるようになるか、という発想からのみのアプローチなのだ。なぜなら、そういう食事が必要な人は少数派だから!
食に限らず、大多数の人が受け入れるものに、少数派が合わせなければならない状況は、子育て中にたくさんあった。健常児の長男より、障害児の次男との関わりでは、ほんとに多かった。
歩けない・話せない・噛める次男が、歩けない・話せない・噛めない友達と、外食したいと望んだ時、ふと思った。ミキサーを持ち込んで親が二次調理した食事ではなく、料理人が心を込めて提供してくれた料理を、そのまま一緒に楽しむ経験をしてほしい。
長男が友達や彼女と、家の外で楽しむ世界の入口、次男にも当たり前に体験してほしい!
顔馴染みの若いシェフに相談してみた。彼の第一声は、「面白そうですね!」
これこれ!こういう反応が欲しかったんよね、私。
料理人として、お客からのオーダーに応えることは、彼にとって当然のことで、そこには、障害者を支援しようという前のめりな意気込みなどもない。
といって、そういう特殊なことはちょっと…という引きもない。
みんなで楽しく食事、したくてもできないなんて、そんなん淋しいやん。アレルギー対応できない飲食店なんて、今時ありえないんだから、それと同じ。
そんなフラットな感覚のシェフが仕上げたのが、「噛まないフレンチ」
「料理に人を合わせる」のではなく「人が望む(喜ぶ)料理を作る」本来のあり方に、何かホッとした心地がした。
そして驚いたことに、噛まないからこそ、より微細な味わいを感じる新感覚!
噛むという動作なしに、ただ口中に広がる美味を感じぬ続ける、至福の時間。
「噛まない」って、こんなにも楽しいものだったのかとさえ、思ってしまう。
フレンチにとどまらず、このようなメニュー、調理を世の中に普及させたい!
この食を「口楽食」、普及のための活動を「Ko-rakuプロジェクト」と名づけている。
噛める次男でも、本人の気分や体調、介助の仕方により、丸呑み嘔吐ということもある。
とはいえ、受診するほどのことでもなく、専門職の知識やアドバイスに触れる機会はない。
一方で、「噛まないフレンチ」に興味津々やってきた管理栄養士たちは、施設や医療者を通してしか当事者と出会う機会がなく、どうしようもないところからのアプローチとなることへのやるせなさもあるようだつた。
噛める人と噛めない人のフラットに出会い、季節感あふれるフレンチを楽しむ交流会。
そこからの展開にワクワクしながら、「食卓革命」は、季節ごとに開催していくつもりだ。
「噛まないフレンチ」は、Ko-rakuプロジェクトの指針となっている。