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ナチズムの理解のために〜(1)ヒトラーの人物像

当時の世界の指導者たちのイメージ

ナチズムとは一体何であったのか。それを紐解くにあたり、当時、世界の指導者たちのイメージをまとめてみることにする。ムッソリーニ、スターリン、チャーチル、ルーズベルト、そしてヒトラーの5人を「人物像」に焦点を当てて、比較してみると面白いことがわかってくる。

ヒトラーを除いて、帝王的であったり、貴族的であったり、エリートである。これに対して、アドルフヒトラーは、第一次大戦では下士官の伍長どまり、しかも学歴も今ひとつである。ただし、性格はカリスマ的であり、しかも弁が立つ。聴衆の心をつかむのに巧みであった。

初期、ムッソリーニはヒトラーを見下し、軽蔑さえしていた。ムッソリーニは、古代ローマ帝国の再建を訴え、イタリアの国王も納得させる力を持ち、その生活も帝王的で豪奢であった。

一方、スターリンはロシア人にしては背が低く本人もそれを気にし、人前に出る時はいつも底の高い靴を履き、態度も独善的。常に忠実な部下で周りを固めていなければ気が済まなかった。彼にとっては、社会主義的理念などはどうでもよいことであった。いや、そのような理念が崩壊していること(5カ年計画の失敗)を自覚していたため、ソビエト民衆をつなぎとめておくには「ナショナリズム」(ロシアナショナリズム)以外にないことをよく知っていた。

チャーチルは18世紀初頭、イギリスがフランスに開戦した際の宰相マールバラ公の子孫であり、もともとイギリスの大貴族の家系である。その上、彼は行政能力に長けていただけではなく、弁舌もさわやかであり、文才も優れていた。彼の第二次大戦の記録がノーベル文学賞を受賞したときは、さすがにみんな驚いたものであった。

ルーズベルトは先に上げておいた通り、アメリカ社会のWASP(白人、アングロサクソン、新教徒)の中のエリート層に属していた。その上、彼は時代感覚に敏感であり、説得力もあったため、アメリカ憲法上大統領三選が禁じられていたにもかかわらず、非常事態を理由に四選まで果たしている。これは国家的危機の時、行政権を握る者の独創体制を許す典型例である。

こう見てくると、同時代の他の指導者に比べてヒトラーの経歴が、あまりにもみすぼらしすぎる。ただし、ヒトラーが他の指導者に比べて特異であったのは、彼の性格が「カリスマ的」であったこと、それに弁舌のさわやかさが加わる。

彼の演説は民衆を見下したり、高台からなされることはなかった。常に民衆の目線に立っていた。とすると、彼のカリスマ的性格とは一体どのようなものであったのか。

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