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【映画レビュー】『シカゴ7裁判』を観て感じた熱狂とその本質、言葉の大切さについて

Netflixで配信中の『シカゴ7裁判』先日、2021年アカデミー賞候補予想というサイトで紹介されていたので、観てみました。後日、この作品が正式にノミネートされたことを上記サイトで知りました。

そこで、この映画のどんなところ評価されがアカデミー賞作品賞にノミネートされたのか、個人的に考えてみましたので紹介していきます。

この映画、簡単に言うと、反戦映画なのですが、何かしらの運動による熱狂に正しく向き合う、本質を正しく伝えることの大切さを表現した映画だと思います

何かを伝えるために人は、よく同じ想いを持つ人達と一緒に運動をします。しかし、彼らが「何を伝えたいのか」を分かっていない多くの人達にとって、彼らは「運動するために運動している」ように見えるのではないでしょうか。

言葉はとても大切

彼らが何を伝えようとしているのか、彼らはそれをわかりやすく言語化して、表現する必要があります。ただし、その表現は常に本質を捉えている必要があります。

反戦運動において、公園を占拠し、音楽フェスを開いて、公園内で飲酒やドラッグなど様々なことをし「PEACE!」と叫んでも「何が平和だ、ボケ!」と言われそうです。

要は、イデオロギーを言語化し、仲間と共有し、そして、公園にいる誰もが「ベトナム戦争は間違っている!」と言わないと、それが捨て身の抗議であることは、他の人に伝わりません。

熱狂とは?狂気とは?

人が熱狂の中にいる時、本質を見失いがちです。狂気という言葉は「気が狂っていること」という意味で使われがちですが、僕は、狂気という状態について、このように捉えています。

狂気とは、狂気の中にいることに気づかないこと。

狂気とは、狂気の中で「狂気だ」とばかり言っていること。

繰り返してしまいますが、これは、狂気という言葉の捉え方ではなく、狂気という状態についての捉え方です。

この捉え方をすれば、ベトナム戦争という狂気の中で、自分自身が狂気の中にあることに気づき、この戦争が間違いであることを訴え、行動したシカゴ7の人たちは、正気であったのだと思います。

しかし、反戦運動という熱狂の中で、その本質を見失ってしまう人たちも多くいたのではないか、そして、その見失った人たちは、本質を捉えた人たちよりも目についてしまったのではないか、と思うのである。

大事なのはやはり言葉

裁判では言葉が記録されます。つまり、言葉が全てです。立場や思想や行動の上澄みである言葉だけが捉えられ、審議されます。いわゆる裁判モノであるこの映画を観ながら、僕はやはり言葉って大事だなーと実感しました。

ネタバレになってしまいますが、この裁判では、反戦運動を扇動したシカゴ7が共謀罪に該当するかどうかが審議されます。

物語の最後の方で、シカゴ7の中の一人が民衆を煽った言葉が取り上げられます。以下、ネタバレですので、ご注意ください。

〜〜〜〜以下、ネタバレ〜〜〜〜

主人公のエディが民衆へ向けたメッセージ「血が流れるなら、街中で血を流せ」"If blood is gonna flow, let it flow all over the city.”

この言葉が暴動を煽ったのだと、検察から指摘されました。そのまま捉えてしまうと、この言葉は「街を血の海にしてやる」的な発言に受け取られてもおかしくないし、実際に、多くの人はこの言葉で警察官に立ち向かっていきました。

しかし、この言葉の真意は、違いました。

このシカゴ7事件において、最も狂気だったのは、デモを抑え込もうとする政治家と警察の暴力性でした。言うことを聞かない民衆を、警察は暴力で抑え込んでいました。

集会の最中、仲間が警察官から殴られて血を流している姿を見て、エディは「(この反戦運動で)私たちの血が流れるなら、街中で血を流そう」と民衆に訴えかけたのですが、OUR(私達)という所有代名詞が抜けていたのです。

熱狂がそうさせたのかもしれない、と僕は思いました。熱狂と不足した言葉によって、民衆は暴徒化してしまった、あるいは、暴徒化したと見なされてしまったのだと。

〜〜〜〜以上、ネタバレ〜〜〜〜

そして、物語のラストに向かうのですが、最後のシーンは反戦運動の本質を思い出させてくれる、素晴らしいものでした。

熱狂、言葉、本質

以上、映画の感想とポイントをご紹介しましたが、映画「シカゴ7」は、熱狂、言葉、本質というテーマを捉えると、しっかりと内容が捉えられ、とても楽しめるはずです。

そして、この3つは、今の社会にとって、特にアメリカにおいて、重要なことだと思います。人は簡単にSNS上の情報(言葉)に踊らされ、本質を見失ってしまうからです。

ですので、『シカゴ7』は今の社会で押さえるべきポイントをしっかりと抑えた映画だと言えます。とてもおもしろかったです。

本作は、アカデミー賞作品賞にノミネートされていますが、どうなるでしょうか。他の作品を観ていないのでなんとも言えませんが、とても楽しみです。

いつも読んで頂いてありがとうございます。また読んでください。

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