これが霞が関文学?~緊急避妊薬の薬局購入について~
‐緊急避妊薬の薬局購入の議論
現在は医者の診察を受けた上でうけとる処方箋が必要な緊急避妊薬について、薬局で購入することを目指した議論が厚労省で来月7日に開始されます。
(朝日新聞)https://digital.asahi.com/articles/ASP5X5W6KP5XULBJ005.html?iref=comtop_BreakingNews_list
‐緊急避妊薬とは
緊急避妊薬は性行為から72時間以内に服薬することで、妊娠してしまう確率を大幅に下げることができる薬です。
中絶するよりも女性の精神的、身体的苦痛が軽減されるということから、医師の診察がなくとも薬局で購入できるようにしてほしい、と要望が続けられていました。
そして、2020年12月に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画に、
「 …女性が、…薬剤師の十分な説明の上で対面で服用すること等を条件に、処方箋なしに緊急避妊薬を適切に利用できるよう、薬の安全性を確保しつつ、当事者の目線に加え、幅広く健康支援の視野に立って検討する」
という文章が盛り込まれたことにより、議論が進められることになりました。
閣議決定は、全閣僚がこの政策を実現する、という意思を国民にしめすもの。
だからこそ、今回検討会が開始されることが決まったのです。
第5次男女共同参画基本計画https://www.gender.go.jp/about_danjo/basic_plans/5th/pdf/print.pdf
‐政府文書は書きぶり次第で意味に大きな違いがある
一方、閣議決定文書に記載されたから、もうその政策が確実に実現する、というわけではありません。
閣議決定文書は、決定前に政府内で協議(各省協議といいます)がかけられ、厳しい文言チェックが入ります。
閣議決定文書は国民との約束です。
書いてあることが実現できなければ、その政策を担当している省庁は厳しい追及を受けることになります。
そのため、政策の担当者は政策の実施までのハードルを気にしつつ、協議の際に担当している政策に関する文言を修正します。
‐政府文書の書きぶり例
たとえば、以下のような場合は、政府としての約束度合いが強いです。
1)期限を切る表現がある(〇年度までに○○を行う等)
2)実施する、実現する等の表現がある(〇〇に対する支援を実施する等)
3)方向性がある程度示されている(○○を縮小する方向で検討を進める等
‐今回の緊急避妊薬の薬局販売解禁は予断を許さない
今回の緊急避妊薬の文言については、あくまで
緊急避妊薬、処方箋なしに緊急避妊薬を適切に利用できるよう検討することが約束されているだけ
であり、検討した結果見送り、という可能性もあります。
実際、田村厚生労働大臣も(計画の閣議決定前ではありますが)2020年10月9日の記者会見で
・緊急避妊薬について、必要性があるということは理解
・一方で、医薬品の安全性を確保していかなければならない
・感染症(筆者注:コンドームの不使用による)の危険や、性教育という問題もある
という趣旨の発言をしており、解禁か引き続き禁止かどちらにもとれるような発言をしています。政策の行方は今後の厚生労働省での議論にゆだねられています。
https://www.mhlw.go.jp/stf/kaiken/daijin/0000194708_00284.html
‐まとめ
このように、政府の閣議決定に進めたい政策が記載されたとしても、その書きぶり次第で、大きく意味が異なります。
これを世間では霞が関文学、というのかもしれません。
気になる政策が政府文書に載ったときはその文言をよく確認してみるといいですね。
‐今日のおさらい
・政府文書の文言には、政策の実現可能性がにじみでる。
・期限を切る、実施する等の表現、方向性の明示、がある場合は実現可能性高
・医者に行かずに緊急避妊薬を入手する、政策は、実現可能性が未知数