【2023年末】スタートアップ資金調達環境お天気図
お疲れさまです!
千葉道場ファンドの石井(X: @takaki_ishii) です!
元起業家で現在千葉道場ファンドというVCで投資家をしております。主にシード・アーリー/プレAまたはレイターステージを主な対象として投資をしております!
さて、今回の記事は2年ほど前からほぼ半年おきに更新している【スタートアップ資金調達環境のお天気図】の2023年末版となります。
「現在の資金調達環境ってどうよ?」というのを、石井の主観によってゆる〜く天気図で示したものになりますので、参考程度に読んでいただければ嬉しいです。
前回の記事はこちら。
プレIPO/レイターステージ
まず2023年のスタートアップを取り巻く資金調達環境を大きく振り返ると、前年に続く緩やかな調整期間だったと感じています。
新規上場においてもダウンランドIPOが数多く見受けられましたし、同様にレイターステージのスタートアップもダウンランドで資金調達を行うケースが続出していました。
結局のところ「2021年相場はHigh Valuationだったよね…」という共通認識が形成されているのかなと感じており、2021年相場で調達したスタートアップにとっては次の資金調達が難しくなっている(時価総額の目線感が投資家と合わないことが多い)構図だと思われます。
この調整が、上場時に行われる際はダウンラウンドIPOとなり、未上場で行われる場合はダウンラウンドでの資金調達という事象として現れているのかなと。
この1年で調整は進んだ印象はありますが、調整期間はまだ続き、はやくても来年前半くらいまでは続くのではないかと感じています。
ともあれ、1年前であればダウンラウンドでのIPOや調達というのはかなり悲観的に受け止められていましたが、(良い意味で)事例も多く出ているため、スタートアップ側も投資家側も環境に対応できつつある印象です。
そのため、今回の天気予報ではレイターステージの調達環境を「くもり」と表現いたしました。前回のような阿鼻叫喚な大嵐ではすでに無く、淡々と市況に向き合っていくという感じです。
ミドルステージ(シリーズA以降)
ミドルステージについて書いていきます。こちらは「雨、一部で晴れ」と表現しました。
シリーズA以降のミドルステージにおいても「調整」による影響が出ていると感じています。特に時価総額の算出ロジックが見直されたSaaS等のスタートアップにおいては、業績が伸びているにも関わらず、投資家の目線感と合わないという悔しい思いをされるスタートアップも増えているのではないでしょうか。(投資家としても本当に辛いです…汗)
このように苦戦しているスタートアップがある一方で、既存投資家のみで次の資金調達を済ませるケースも見受けられており、ミドルステージ以降の資金調達難易度に温度差が出てきています。
私たちの投資先で公開されているだけでも、カケハシやカミナシがほぼ既存投資家のみで資金調達を実施しました。(他にも数社の事例があります。)
この調整期間において、「晴れ」な調達環境を迎えるためには、好調な事業進捗だけではなく、投資家とのコミュニケーションが効いているように感じています。
月次の定例ミーティングやレポート等も大切ですが、それ以外で投資家とマメにコンタクトを取っているCEO/CFOは投資家側の目線をよく理解されており、だからこそ資金調達も円滑に進むのかなと感じています。
言われてしまえば当たり前のことではありますが、大切な観点かなと改めて思いました。(私たちにもファンドに投資していただいているLP投資家がいらっしゃいますので、丁寧なコミュニケーションを心がけたいと思います…!)
アーリー/プレシリーズAステージ
続きまして、アーリー/プレシリーズA(以降、プレAと表記)ステージについて。感覚的には時価総額5億円から10億円前後くらいまでのスタートアップをイメージしながら書いています。
こちらは「晴れ、ときどき曇り」と表現しました。
アーリー/プレAステージはまだ資金は集まりやすい環境かなと思いますが、シードラウンドで調達した資金が不足して十分なトラクションを出せず、ブリッジファイナンスを行うケースも見受けられました。
この場合、もちろん既存VCがサポートするケースもあるのですが、一方でVCとしても追加投資が難しいケースもございます。そういった場合の受け皿としてエンジェル投資家の存在感が増している印象です。
いずれにせよ、シリーズA以降のステージに進むと投資家側もよりセレクティブになりますので、それらを意識したトラクションづくりが大切なことは変わりません。
シードステージ
最後にシードステージです。「晴れ」と表現しました。
非常に調達環境は良いのかなと思っており、シード特化のVCも、アクセラレータープログラムも急増していることに加えて、生成系AIなどの新しいトレンドも来ているので事業ネタも豊富です。
もちろん、レイターステージで行われている調整や、シリーズA以降の調達環境を見越して、投資家側がHigh Valuationを許容しているかというと、そうではない印象ですが、個人的にはこの10年でもかなり良いコンディションかなと感じています。
ということで、約半年おきに行っている資金調達環境のまとめでしたー。少しでも参考になったのであれば嬉しいです!
2024年の予想
最後に、来年の予想について今感じていることを書いていきます。まぁ、未来予想というのはほぼ外れるのが前提ではありますが、今日の時点でこんな事を考えている、ということを整理しておこうかなと思っています笑。
前述の通り、調整期間は今後も続くものの、海外のようなドラスティックな変化はなく、概ねまったり進行するのかなと予想しています。
政府のスタートアップ支援は変わらず手厚いですし、VCの投資余力(ドライパウダー)もまだ潤沢にあります。今回まとめたような市場環境は概ね来年も続くものと感じており、私個人としては概ね楽観的に考えています。
一方で、不安要素も多く存在しています。
日本もついに利上げに踏み切る可能性が高くなってきております。実現した際は、上場グロース銘柄の評価がさらに下がり、まさに2022年から米国のスタートアップを襲った大嵐の再現になる可能性はゼロではありません。
この大嵐はスタートアップだけを襲うものではなく、当然VCにも直撃します。LP投資家の投資アセットが未上場株式(=スタートアップ)から他の金融商品に移ることで、VCのファンドレイズが難航し、結果的に投資余力がなくなる可能性もあります。(米国では2023年春頃にVCのレイオフが相次いだレベルです。)
もちろん、日本のVCに投資する投資家の属性は米国とは異なるので、同じシナリオになると個人的には思っていないのですが、大きく影響を受けることは間違いありません。怖いです。
他にも来年2024年は「大統領選挙イヤー」と言われており、世界情勢が目まぐるしく変わる可能性があります。特段影響が大きいのは台湾および米国の選挙ではないでしょうか。
2023年も目を覆いたくなるような悲惨な戦争・紛争が相次いでおり、一刻も早く終結してほしいと願っていますが、残念ながら日本の地政学的リスクも年々高まっていると感じています。
不安定な国際情勢が国内スタートアップの環境に影響をもたらすこともあるので、注視していく必要があります。
いずれのシナリオも無いに越したことはないなと思いますが、このような事態が起きた時、自分たちはどう対応するのかは考えておいてもよいのかなと思っています。
他にも米国の超巨大プラットフォーマーの変化が事業リスクに直結するようになってきたーとか、スタートアップ同士のM&Aがもっと増えるのではないかーとか、ベンチャーデットどうなるんだーとか、ファンド期限満了に伴うセカンダリー取引の事例も増えていきそうだねー等、いろいろ書きたいことはあるのですが、収集つかなくなりそうなのでこのへんで終えたいと思います笑(気になるワードがある方、ぜひランチや飲みでお話しましょう!)
個人的には、2024年で一番楽しみにしていることがApple Vision Proの発売です笑。おそらく最初は日本での発売はされないと思うので、発売日にサンフランシスコまで弾丸ツアーしようかなと考えているくらい楽しみです。はやくVision Pro装着して山手線に乗りたいです。未来を生きたい。
他にも千葉道場ファンドとして新しいチャレンジも色々仕込んでいますし、千葉道場コミュニティもかなり盛り上がってきているので、来年も楽しみなことが目白押しです。元気に頑張っていきたいです!
最後に
以上、2023年12月時点のスタートアップ資金調達環境と2024年の予想について、私個人が感じていることをまとめました。
改めてにはなりますが、いちVC投資家個人による印象を整理したのみの文章となります。完全なポジショントークですし、立場によって見える景色は異なると思いますので、是非皆さんのご意見もお聞かせいただけると嬉しいです。
そして、最後に宣伝を…笑!
私が所属する千葉道場ファンドは今後もシード・アーリー/プレシリーズAのスタートアップにたくさん投資させていただく予定です。
もっと言うと、時価総額10億円未満のステージが得意で、1,000万から最大1億円まで投資可能です。リードもフォローもやりますので、起業家の方はお気軽にご連絡ください!(XのDM開放しています。)
最後まで記事を読んでいただき、誠にありがとうございました。皆様、良いお年をお過ごしください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?