林檎を食べるあの子
気分によっては構われたがりではないし、普段だったら見慣れつつある黒髪を見かけても、アンテナを張りつつそっとしておくのが常だった。けれど、胃の奥から急き立てられるように出てしまった小さな音を華恋の耳は聞き逃さなかったし、ちゃんと鼓膜から脳へと届いた。
「ひかり、ちゃん?」
そろそろと静かに名前を呼ばれたひかりは、正面に向けていた顔を華恋に向けて、少しだけバツの悪そうな顔をする。お出掛け用の白に青いアクセントが利いた長袖ワンピース姿のまま、ひかりはリビングのテーブルを前にして所在