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【オーセンティック・リーダーシップ】ALの発揮と関連するのはどのような特性か?(De Hoogh et al.,2005)

パーソナリティ×リーダーシップシリーズ、続いては、オーセンティック・リーダーシップです。

De Hoogh, A. H., Den Hartog, D. N., & Koopman, P. L. (2005). Linking the Big Five‐Factors of personality to charismatic and transactional leadership; perceived dynamic work environment as a moderator. Journal of Organizational Behavior: The International Journal of Industrial, Occupational and Organizational Psychology and Behavior, 26(7), 839-865.


どんな論文?

この研究では、ビッグファイブ性格特性がオーセンティック・リーダーシップ(AL)にどのように影響するかを調べたものです。

ALとは、自分自身を理解し、透明性を持ち、倫理的な行動をするリーダーシップのスタイルです。過去数十年間に、エンロンやリーマン・ブラザーズ等の企業スキャンダルが倫理に反する行為により発生したことから、リーダーに倫理性、道徳性、真実性といった特性を求めるようになったとのこと。
こうした背景から、研究者たちは2000年代初頭に研究が盛んであったALの概念に、再び注目するようになっているようです。

本研究は、そんなALがリーダーのどのような特性との関連するかについて定量的に調べたもので、パキスタンの305人のリーダーと部下から得たデータを用いて分析しました。その結果、

  • 外向性、協調性、誠実性、経験への開放性がALと正の関連

  • 神経症傾向がALと負の関連

があることが確認されました。

著者らは、リーダーの性格特性がALのリーダーシップスタイルを予測できることから、企業は性格検査を使って適切なリーダーを選び、育成するための手助けができるという示唆を呈しています。


ビッグファイブ特性ごとの、ALとの関連性

以下にビッグファイブの特性ごとに、オーセンティックリーダーシップ(AL)との関連性をもう少し細かく見ていきます。

外向性(Extraversion)
外向性は、ALに最も強い正の関連を示しています(β = 0.24, p = 0.0001)。外向的なリーダーは楽観的で希望に満ちており、自己制御ができ(self-regulated)、自己認識が高いとのこと。
これらの特性は、リーダーがフォロワーの自信を高めるのに役立ち、ALに必要な特質とされています。

協調性(Agreeableness)
協調性もALに正の関連がありました(β = 0.14, p = 0.04)。協調性が高いリーダーは、公正で信頼性があり、他者に対して親切とされます。ただし、協調性の効果サイズは小さいことから、協調的なリーダーは、時には過度に従順と見なされるとのこと。

誠実性(Conscientiousness)
誠実性もALに正の関連を示しました(β = 0.11, p = 0.03)。誠実なリーダーは責任感や自己規律があり、計画的・組織的で信頼性があるとのこと。これらの特性は、リーダーが倫理的で透明性のある行動を取るために必要とされる要素とのこと。

経験への開放性(Openness to Experience)
経験への開放性もALと有意な正の関連がありました(β = 0.22, p = 0.0001)。この特性が高いリーダーは、独創的で分析的であり、透明性とバランスの取れた情報処理を要素として持つALに適した特性とのこと。

神経症傾向(Neuroticism)
神経症傾向はALに有意な負の関連がありました(β = -0.22, p = 0.00)。神経症的なリーダーは感情的に不安定であり、自己効力感が低く、フォロワーにとって良いロールモデルになりにくいため、ALのスタイルとは反するようです。

補足:パーソナリティは、AL発揮をどの程度予測するか?

本研究で興味深いのが、ビッグファイブ性格特性が、ALをどの程度予測できるのか、という点を、他の特性×リーダーシップと比較して述べている点です。(統計的には、決定係数R2乗の大きさを見ます。)

著者らによると、ビッグファイブ性格特性は、ALの45%の分散を説明する(=ALの発揮を予測する)とのこと(R2=0.45)。
つまり、AL発揮に影響を与えるであろう、職場要因、リーダーの属性要因等々がいろいろある中で、この特性が、ALを説明する割合が45%であることを示唆します(たぶん)。

この説明力は、他の研究と比べても高い水準にあるようです。以下が比較対象です。

  • Judge&Bono(2000):ビッグファイブ特性による、リーダーシップの出現の説明力は28%

  • Bono&Judge(2004):メタアナリシス研究ということもあって、ビッグファイブ特性がカリスマ的リーダーシップの説明力は12%

  • Kalshovenら(2011):ビッグファイブ特性による、倫理的リーダーシップの説明力は13%

こうしてみると、45%の説明力は比較的高い、と言えそうです。但し、サンプルの違いの影響もあり得るため、常にビッグファイブ⇒ALが高い説明力を持つ、とは言い切れなさそうです。


感じたこと

パーソナリティ×リーダーシップの研究も結構いろいろあると感じる日々です。以前の投稿にあった「意外」な結果は少なかったものの、やはり個々人のパーソナリティの影響は見過ごせない、と改めて感じました。


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