【リーダーシップ】サーバント・リーダーシップと関連あるパーソナリティとは?(Hunter et al.,2013)
パーソナリティ×リーダーシップシリーズです。サーバント・リーダーシップに与える規定要因を調査分析した論文を紹介します。
どんな論文?
この研究は、サーバント・リーダーシップがどのように従業員や組織に影響を与えるかを調べたものです。サーバント・リーダーシップとは、リーダーがまず従業員のニーズに応え、サポートすることを重視するリーダーシップのスタイルです。
研究の結果、パーソナリティとサーバント・リーダーシップの関係について、以下の洞察が得られました。
リーダーが協調性(他人との良好な関係を築こうとする性格)を持つほど、従業員はそのリーダーをサーバントリーダーと感じやすい
リーダーが外向性(社交的で自己主張が強い性格)を持つほど、従業員はそのリーダーを、サーバントリーダーと感じにくい
また、サーバント・リーダーシップは、従業員が仕事を辞めたいと考える意向(離職意向)や仕事への意欲を失うこと(脱離)を減少させることがわかりました。
さらに、サーバントリーダーシップは、従業員同士が助け合う行動や販売行動を促進することも示されました。
つまり、サーバント・リーダーシップを実践するリーダーがいると、職場の雰囲気が良くなり、従業員が積極的に仕事に取り組み、他の従業員を助け合うようになります。
モデル図は以下の通りです。
なぜ、外向性があるとサーバントリーダーと見做されない?
以前の投稿で、外向性というパーソナリティが、リーダーシップに正の影響があることを示した文献を紹介しましたが、本研究によると、外向性はパーソナリティに負の影響を示しました。では、なぜ外向性があると、部下からサーバント・リーダーだと感じてもらえないのでしょうか?
過去の先行研究を参照し、著者らは外向性が地位追求、つまり「階層内で権力と支配を得ることを目指す目標」と関連していると紹介します。実際、Lucas, Diener, Grob, Suh, and Shao(2000)は、外向性の「本質」は社交性ではなく、報酬の追求であるとまで述べられているようです。
言い換えれば、外向的な人々は、認識と報酬の機会を増やすために主に社交的である、ということになるとのこと。
このような意図は、サーバントリーダーっぽくないですね。。サーバントリーダーは、自分自身の利益よりもフォロワーや組織の利益を優先する、と言われています。
また、外向的なリーダーは会話を始めることが多い一方で、注目の中心になることを好み、社会的な相互作用を支配する傾向があります(Grant, Gino, & Hofmann, 2011)。
このような傾向は、サーバントリーダーが持つべき謙虚さや他者への関心と反対、と著者らは説明します。ほかにも、外向的なリーダーはフォロワーとの質の高い関係を構築することに寄与しない、という結果もあるとのこと(Nahrgang, Morgeson, & Ilies, 2009)。
つまり、外向性の低いリーダー(=内向的なリーダー)の方が、サーバント・リーダーとして認識されやすいということであり、今回の結果でも支持されています。
一方、協調性の高い個人は、他者との積極的な関係を重視し、そのために行動する動機がある、と著者らは説明します。
協調性の高い個人は対人関係に重点を置き(Barrick, Stewart, Neubert, & Mount, 1998)、謙虚で他者中心的である(Judge et al., 2002)ように、サーバントリーダーもフォロワーとの質の高い関係を築き、コミュニティを形成するために時間を費やします(Ehrhart, 2004)。
このように協調性とサーバント・リーダーシップのポジティブな関連性が仮説として立てられ、研究でも支持されていました。
感じたこと
外向性と協調性、それぞれが異なるサーバント・リーダーシップとの関連性を持つことには特に違和感がありませんでしたが、
「外向性の『本質』は社交性ではなく、報酬の追求」
「外向的な人々は、認識と報酬の機会を増やすために主に社交的」
といった研究があることには驚きました。
これも自分のバイアスかもしれません。外向性があるというと、部活のキャプテンやムードメーカーのように、明るく人を巻き込むエネルギッシュなイメージを持っていますが、裏の目的がある、という見方もあるのだと考えさせられました。この辺は原典にあたってもう少し深堀してみたいところです。