【パーソナリティ】外向性の高いリーダーがパフォーマンスを生む際の条件とは?(Grant et al.,2011)
今回は、外向的なリーダーが成果を出す際の条件について示した研究をご紹介いたします。一流ジャーナルに掲載されるだけあり、なるほど、確かに!と思わせられる論文でした。
どんな論文?
この論文は、リーダーの外向性がグループパフォーマンスにどのように影響するか、その条件を明らかにしたものです。
外向的なリーダーシップがグループパフォーマンスに貢献する条件と、それに反する条件を、アンケート調査と実験の2つの手法を用いて調査した結果、
従業員がプロアクティブでない場合、外向的なリーダーが高いグループのパフォーマンスをもたらす
従業員がプロアクティブな場合、外向的なリーダーの下で逆に低いグループのパフォーマンスをもたらす
ことが示されました。ここでいうパフォーマンスは、Tシャツの折り畳み数で測定されています。
著者らの考察では、内向的なリーダーは、従業員のアイデアや改善提案を受け入れる傾向があり、これがパフォーマンス向上に繋がる一方、外向的なリーダーは自分の意見を押し付ける傾向があり、従業員の意見を受け入れない可能性があるとのこと。
過去の先行研究では、外向性が「さまざまな研究設定およびリーダーシップ基準において最も一貫した相関関係を示している」とされています。
例えばBono&Judge(2004)は、外向性が「変革型リーダーシップ」を最も高く予測する因子であるとし、外向性の高いリーダーは、カリスマ性を発揮し、知的刺激を提供し、従業員に対して個別の配慮を提供する可能性が高いことを示しています。
しかし今回の研究は、外向性の高いリーダーが、必ずしもパフォーマンスを導くのではなく、フォロワーのプロアクティブさによる、という点を実証的に示したという点で、新しい知見を提起しています。
仮説を導いた背景
著者らは、外向性という特性について、「地位を求め、断定的で対人関係において支配的であり、話し好きで外向的に行動することが多い」という先行研究の知見から、外向性の高いリーダーよりも低いリーダーが、従業員からのボトムアップのプロアクティブな行動をより受け入れやすいと予想しています。
またこの予想は、支配の補完性理論(Carson, 1969; Kiesler, 1983)というものにもとづいているそうです。
この理論によれば、ある人物・集団からの支配と断言が、他の人物・集団からの従順、服従、従順さによってバランスが取られるとき、質の高い相互作用が促進されるとのこと。
雑に言い換えると、能動的な人がリーダーだと、受動的フォロワーは楽をできるのでWin-winになるということでしょうか。
この観点からすると、高い外向性のリーダーが、プロアクティブさの低い(つまり受け身的な)フォロワーだとうまく成果につながるのと同時に、プロアクティブさの高いフォロワーは、外向性の低いリーダー(内向的リーダー)の支援的な行動を補完する、とも言えそうです。
アンケート×実験という研究の組み合わせ
著者らの1つ目の研究は、ピザデリバリーフランチャイズの利益と、外向的なリーダーシップの間の正の関係が、従業員がプロアクティブである場合に逆転するかどうかを現場データを使用して調査しています。57の店舗リーダーと374名の従業員によるアンケート調査によるものです。
2つ目の研究では、56名のグループリーダーと4名のフォロワーに「10分間でできるだけ多くのTシャツを折りたたむ」というミッションに取り組んでもらいました。4名のフォロワーのうち、2名は研究助手で、いかなる実験条件でも同じ枚数のTシャツを折るよう指示されています(サクラのようなものでしょうか)。
ご褒美として、最も生産性が高いグループにはiPodが贈られる、という設定までつけていたようです。
なお、外向性の高いリーダーと低いリーダーは、操作的に設定されています。外向性の高い条件に選ばれた群には、外向性の高さが重要かつ有効である、というコンテクストの文書が渡され、自分が外向的な行動をして成功した経験を書くというタスクが事前に支持されています。(外向性の低い役割の群には、内向的な行動の重要性と経験の記述が指示されています)
一方、フォロワーの方は、受動的な条件では、研究助手が折りたたみタスク中ずっとリーダーの指示に従うだけで行動しました。一方、プロアクティブな条件では、1分30秒後に1人の助手が「もっと効率的な方法があるのではないか」と提案する、という行動を取っています。
実験研究は前回の投稿でも紹介しましたが、かなり手が込んでますね。多くの場合、教授らの受け持つ授業で実施されているようです。(そうでもしないと、なかなか難しいですね・・・)
感じたこと
外向性がリーダーシップに有効、というそれまでの定説に対し、フォロワーのプロアクティブさという条件によって異なる、という仮説と結果を導いた点にしびれました。
どうしても、先行研究を調べていると「なるほど、そうか」と納得してしまうことが多いのですが、先行研究を批判的に読み、盲点をつくような研究は面白いだけでなく、有効に働く条件を具体化できるので、実践的にも役に立つ、と感じました。
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