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【パーセリング】尺度を合成する際のさまざまな方法を比較した論文(Landis et al., 2000)

引き続き、パーセリングを扱います。最近は随分マニアックな論文レビューですが、統計的な手法である構造方程式モデリングを扱う研究を行う身としては、あまりまとまった情報がなかったので、自分の備忘録として作成しています。
いつか誰かの役に立つかもしれません・・・少なくとも未来の自分の役には立ちそう(すぐ忘れちゃうので)。

今回の文献も、2024年10月6日時点で1470件とそこそこの引用数を誇っています。

Landis, R. S., Beal, D. J., & Tesluk, P. E. (2000). A comparison of approaches to forming composite measures in structural equation models. Organizational Research Methods, 3(2), 186-207.


どんな論文?

この論文では、構造方程式モデリング(SEM)で使われる合成尺度の形成方法を比較したものです。SEMは、複数の変数間の関係を同時に分析できるため、組織研究でよく用いられる方法です。通常、SEMでは各質問項目を個別に扱いますが、この研究では、いくつかの項目をまとめた「合成尺度」を作ることで、モデルの適合性(データとモデルの一致度)が向上するかを調べました。

研究では、公立学校の教師1,177人から集めたデータを使い、いくつかの合成尺度の作り方をテストしました。さらに、ブートストラップ法という統計手法で異なるサンプルサイズのデータも生成し、比較しました。結果、すべての項目を個別に扱うよりも、項目を合成して扱った方がモデルの適合性が良くなることが示されました。

この論文の結論として、特にサンプルサイズが小さい場合に、合成尺度を用いるとモデルがより安定し、より良い結果が得られることがわかりました。また、どの合成方法を使うかによっても、適合性に差が出ることが確認されました。この研究は、SEMを使う研究者にとって、より効率的な分析方法を提案するものです。

まさに、方法論の全体像や使い分けが知りたかったので、大変助かりました。以下が文献で簡潔にまとめられた各合成手法(パーセル化手法)の一覧となります。

こういうのがほしかった


6つの合成尺度形成手法に関する補足

本論文では、6つの合成尺度形成手法について、それぞれの利点・欠点を分析しています。以下はそれぞれの手法の特徴と、利点・欠点、および使い分けについての詳細です。
(一部、他のサイトでの調査結果も含めてまとめています。備忘として。)

1.Single Factor Method

【利点】
・強力な測定モデルを構築でき、モデルの適合性を向上させることができる。
・因子負荷量に基づいてバランスの良い合成尺度を形成するため、尺度間の信頼性が高くなる。

【欠点】
・ 因子分析を行う必要があり、手間がかかる。
・尺度が多次元的な場合、1つの因子にまとめることで情報が失われる可能性がある。

【用途】
・ 測定対象が単一の構成概念となる場合や、一次元データの信頼性が高い場合に適している。例えば、性格特性のように多くの項目が1つの基礎的な因子に基づいている場合、例えば、単一の性格特性(例: 外向性)を測定する際に頻繁に利用される。

2.Correlational Method

【利点】
・項目間の相関に基づくため、相関が強い項目をまとめて合成尺度を作成できる。 
・信頼性の高い尺度を簡単に作成できる。

【欠点】 
・尺度が複数の次元を持つ場合、誤った合成尺度を作るリスクがある。
・サンプルサイズが小さい場合には、相関に基づくペアリングが不安定になることがある。

【用途】
相関が強い項目があり、明確に相関構造がわかっている場合に適している。

3. Random Assignment Method

【利点】
・理論的な前提や事前分析が不要で、ランダムに合成尺度を作成できるため、手軽に使用できる。
・すべての項目が同じ構成概念を測定している場合、効果的に使用できる。

【欠点】
・ランダムに項目を割り当てるため、結果が不安定で信頼性に欠ける可能性がある。
・多次元的な尺度では、異なる次元の項目が混在してしまい、測定の正確さを損なう恐れがある。

【用途】 
・単一の構成概念で、項目間に大きな違いがない場合、もしくは予備的な分析での利用に適している。

4. Content Method

【利点】
・理論的な観点から合成尺度を形成するため、概念の正確な測定が可能。
・構成概念が多次元的で、各次元を明確に区別して測定したい場合に有効。

【欠点】
・主観的判断に基づくため、誤った合成が行われるリスクがある。
・他の手法に比べてモデル適合性が低い場合がある。

【用途】
・測定したい概念が複数の次元から成る場合や、理論に基づいて項目を分類したい場合に適している。

5. Exploratory Factor Analysis Method

【利点】 
・データに基づいて項目を因子分析し、それに基づき合成尺度を形成するため、データ主導で次元性を反映できる。
・多次元的なデータにも柔軟に対応できる。

【欠点】
・サンプルサイズが小さい場合には因子分析の結果が不安定になることがある。
・因子分析の結果がシミュレーションに依存するため、尺度の一貫性に欠ける場合がある。

【使い分け】
・測定対象の次元性がはっきりしていない場合や、データに基づいて合成尺度を形成したい場合に適している。


6. Empirically Equivalent Method 

【利点】
・項目の平均、標準偏差、信頼性を考慮して合成尺度を形成するため、項目間のバランスが取れた合成尺度が作成できる。
・強力な測定モデルを構築できる。

【欠点】
・多次元的な構成概念では、異なる次元の項目が混在してしまうリスクがある。
・この手法には高度な統計的手法が必要なため、実装が複雑である。

【用途】
・単一次元の尺度を扱う場合や、測定モデルを強化し、モデル適合性を向上させたい場合に有効。


感じたこと

統計的な妥当性のみならず、心理尺度の一次元性(1つの概念として、先行研究などでも論じられているか同課)等によって、採用するパーセリング(合成)方法が異なる、という点についての理解が深まりました。

なぜ、その方法でパーセリングしたのか?という点にまで明確に応えられるよう、理論的な背景と意図を押さえた上で、パーセリングを行う必要がありそうです。

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