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【インクルーシブ・リーダーシップ】過去のIL研究をまとめた「レビュー論文」(Korkmaz et al., 2022)

しばらく、ダイバーシティ関連の投稿が続いたので、このあたりでインクルーシブ・リーダーシップというテーマに戻ってきます。
今回は、レビュー論文という、これまでの研究をまとめたものを扱います。研究者としては、レビュー論文を抑えることで、研究の大枠がつかめるという大変ありがたいものです・・・!

Korkmaz, A. V., Van Engen, M. L., Knappert, L., & Schalk, R. (2022). About and beyond leading uniqueness and belongingness: A systematic review of inclusive leadership research. Human Resource Management Review, 100894.

どんな論文?

107個のILに関する論文をレビューし、IL行動をマルチレベル(組織、チーム/職場、個人)でとらえたものです。これらの論文を精緻に分析した結果、ILを4次元で整理しています。

①従業員の独自性を育む
②チームへの帰属意識を高める
③感謝を示す
④組織への貢献を支援する

また、ILに影響を与える規定要因(Antecedents)、ILが影響を与える成果要因(Outcomes)、そしてILが成果に至る間にある媒介要因(Mediators)、そして、ILの影響を調整する調整要因(Moderators)を図の通り示しています。(これが大変ありがたかった・・・!)

Korkmaz et al.(2022) P8


もう少し詳しく解説

Korkmazらが示した、4つの次元(上の①~④)を、表にまとめてみました。

Korkmaz et al. (2022)を参考に筆者作成

以前の投稿で紹介した論文では、Carmeli et al. (2010)が、ILを開放性、近接性、有効性の3次元で示したほか、Nembhard & Edmondson (2006)は、他者の貢献や挑戦を奨励し、承認を示すリーダーの言動と定義しています。

Korkmazらは、幅広い先行研究を分析した結果として新たなILの概念化を行い、4次元で表しました。しかし、過去の代表的な定義もうまく組み込んでいるように思えます。


研究の限界

この論文でも、いくつかの限界が呈されています。その中でも特筆すべきは、インクルーシブ・リーダーシップの論文(特に今回レビューされた英語文献)は欧米での研究ばかりで、アジア圏のものが少ないことです。

本論文でも以下のように記載されています。

さらに、一連の行動が、非西洋的な文脈で包括的なものであるかどうかという疑問もある。東洋の文化圏では、インクルージョンを促進するリーダーの行動が異なるかもしれないのですから、このような見方をすることで、インクルーシブ・リーダーシップに対する学者の理解を深めることができるでしょう。したがって、この分野では「西洋」の理論が支配的であり、インクルージョンのような繊細なトピックは特に文脈に特化している可能性が高いことから、より文脈に特化した理論開発を求める(Klarsfeld、Knappert、Kornau、Ngunjiri、& Sieben、2019)。

Korkmaz et al. (2022)P13より抜粋し、Deeplで翻訳

つまり、コンテクスト(文化)の影響が大きいと想定すると、IL行動が東洋の文化圏では異なるかもしれない、と述べています。


感じたこと

やはり一番ありがたいのは、規定要因・成果要因・媒介要因・調整要因を整理してくれている点です。これがなければ、自らこのような整理を作る必要がありました。心から感謝・・・。

もう一つ、IL行動が東洋と西洋で異なる可能性についても、「確かに」と思わされました。どうしても、英語文献は、ダイバーシティに関する感度の違いもあってか、日本を対象とした研究したものが少ないのです。
(最近は中国のものも増えてきている印象です)

ちなみに、日本において、Google Scholarで「インクルーシブ・リーダーシップ」を検索すると、495件(2023年4月29日時点)で、そのほとんどが教育分野のもの。
まだまだ、日本における研究蓄積はこれから、という感じです。

少しでも貢献できるよう頑張らねば。

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