【インクルーシブ・リーダーシップ】過去のIL研究をまとめた「レビュー論文」(Korkmaz et al., 2022)
しばらく、ダイバーシティ関連の投稿が続いたので、このあたりでインクルーシブ・リーダーシップというテーマに戻ってきます。
今回は、レビュー論文という、これまでの研究をまとめたものを扱います。研究者としては、レビュー論文を抑えることで、研究の大枠がつかめるという大変ありがたいものです・・・!
どんな論文?
107個のILに関する論文をレビューし、IL行動をマルチレベル(組織、チーム/職場、個人)でとらえたものです。これらの論文を精緻に分析した結果、ILを4次元で整理しています。
①従業員の独自性を育む
②チームへの帰属意識を高める
③感謝を示す
④組織への貢献を支援する
また、ILに影響を与える規定要因(Antecedents)、ILが影響を与える成果要因(Outcomes)、そしてILが成果に至る間にある媒介要因(Mediators)、そして、ILの影響を調整する調整要因(Moderators)を図の通り示しています。(これが大変ありがたかった・・・!)
もう少し詳しく解説
Korkmazらが示した、4つの次元(上の①~④)を、表にまとめてみました。
以前の投稿で紹介した論文では、Carmeli et al. (2010)が、ILを開放性、近接性、有効性の3次元で示したほか、Nembhard & Edmondson (2006)は、他者の貢献や挑戦を奨励し、承認を示すリーダーの言動と定義しています。
Korkmazらは、幅広い先行研究を分析した結果として新たなILの概念化を行い、4次元で表しました。しかし、過去の代表的な定義もうまく組み込んでいるように思えます。
研究の限界
この論文でも、いくつかの限界が呈されています。その中でも特筆すべきは、インクルーシブ・リーダーシップの論文(特に今回レビューされた英語文献)は欧米での研究ばかりで、アジア圏のものが少ないことです。
本論文でも以下のように記載されています。
つまり、コンテクスト(文化)の影響が大きいと想定すると、IL行動が東洋の文化圏では異なるかもしれない、と述べています。
感じたこと
やはり一番ありがたいのは、規定要因・成果要因・媒介要因・調整要因を整理してくれている点です。これがなければ、自らこのような整理を作る必要がありました。心から感謝・・・。
もう一つ、IL行動が東洋と西洋で異なる可能性についても、「確かに」と思わされました。どうしても、英語文献は、ダイバーシティに関する感度の違いもあってか、日本を対象とした研究したものが少ないのです。
(最近は中国のものも増えてきている印象です)
ちなみに、日本において、Google Scholarで「インクルーシブ・リーダーシップ」を検索すると、495件(2023年4月29日時点)で、そのほとんどが教育分野のもの。
まだまだ、日本における研究蓄積はこれから、という感じです。
少しでも貢献できるよう頑張らねば。
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