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【リーダーシップ】「ダークサイド」に近い特性はリーダー育成にどのような影響を与えるのか?(Harms et al., 2011)

パーソナリティには、サイコパスなど「ダークサイド」に近い特性も存在します。今回は、ダークサイドに近い特性とリーダー育成の関連性を研究した文献の紹介です。

Harms, P. D., Spain, S. M., & Hannah, S. T. (2011). Leader development and the dark side of personality. The leadership quarterly, 22(3), 495-509.


どんな論文?

この論文は、リーダーの育成における性格特性、特に「サブクリニカル特性」と呼ばれる、正常な性格と精神病理の中間に位置する特性に注目しています。

サブクリニカル特性とは、日常生活において重大な機能障害を引き起こすことはないが、特定の状況においてはネガティブな結果をもたらす可能性のある特性、を指します。
例えば、Skeptical(懐疑的)、Excitable(興奮しやすい)、Dutiful(従順な)などの特性が挙げられます。以下、本文献で使用されており、パーソル総研のHPから拝借したHogan Development Assessmentのスケールを貼り付けておきます。

出所:パーソル総合研究所”Insight Report (Hogan Development Survey)”サンプル

これらの特性が、リーダーシップの伸長に対してどう関連するのか、ポジティブ、ネガティブ、その他という括りで見ていきます。

リーダーシップの伸長にポジティブな関連がある特性

  1. Diligent(勤勉な)

    • 勤勉な態度がリーダーシップの伸長にポジティブな影響を与えることが多い

  2. Dutiful(従順な)

    • 従順な態度(他者の期待に応える努力)がリーダーシップの伸長にポジティブな影響を与えることが多い

  3. Bold(大胆な)

    • 大胆さがリーダーシップの伸長にポジティブな影響を与える可能性がある

  4. Colorful(華やかな)

    • 華やかな特性(カリスマ性や自己主張につながる)がリーダーシップの伸長にポジティブな影響を与える可能性がある

  5. Mischievous(いたずら好きな)

    • リスクを取ることに関連する特性で、軍隊の価値観と一致するアイデンティティの強化にポジティブな影響を与える可能性がある


リーダーシップの発展にネガティブな関連がある特性

  1. Excitable(興奮しやすい)

    • 高スコアだと感情が不安定となり、リーダーシップの伸長にネガティブな影響を示すことが多い

  2. Skeptical(懐疑的)

    • 懐疑的な態度は他人への不信感や批判的な態度に繋がりやすく、高スコアだとリーダーシップの伸長にネガティブな影響を示す可能性がある

  3. Imaginative(想像力豊かな)

    • 想像力が豊かだと現実とのギャップを感じるためか、高スコアだとリーダーシップの伸長にネガティブな影響を示すことが多い

その他の特性

  1. Cautious(慎重な)

    • 予想に反して、リーダーシップの伸長にポジティブな影響。慎重な特性は、特定の状況でリーダーシップを強化する可能性がある

  2. Reserved(控えめな)

    • 本研究では、一貫したポジティブまたはネガティブな影響は見られず

  3. Leisurely(のんびりした)

    • 一部の研究ではネガティブな影響が示されているが、全体として一貫性は見られなかった

著者らはこれらの結果をまとめて、以下のように述べています。

総じて、これらの結果は、発展を評価する際に「暗い側面」の特性が必ずしも望ましくないわけではないことを示唆する。一部の特性は発展を促進する一方で、他の特性は発展を妨げる可能性がある。我々がここで見つけたパターンが他の文脈でも再現されるかどうかを評価するためには、広範な文脈にわたるさらなる研究が確かに必要である。

感じたこと

サブクリニカルな特性の存在は初めて知りました。どの特性も、あまりに強いとネガティブに転じる可能性はあると思いますが、正常な性格と精神病理の中間に位置する特性、という、ネガティブに転ぶとヤバい特性があるというのは興味深いです。

ただ、軍隊というデータサンプルの特徴もありそうです。Dutiful(従順さ)とリーダーシップのポジティブな関連は、軍隊ならではかも・・・?

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