空

空を見上げてリセットをする。

いつの写真だか正確には思い出せないが、どこからか羽田空港へ向かう機内からの写真である。自由なタイミングでトイレに行きたいので、海外便では基本的に通路側を取るのだが、時間の短い国内便、特に朝夕の時間帯だと、空を見るために絶対に窓際の席を取ることにしている。ぼくは空が好きなのだ。

仕事柄原稿を書くことが多いので、どこかの場所にこもってパソコンとにらめっこしている時間が日中のほとんど。だが、集中力が持たない。だから、頻繁にカフェを出て、ひたすら歩く。空を見上げる。何も考えずに歩いて、一区切りがつけば、近くに見つけたカフェに入って仕事の続きに取り掛かるという具合だ。曇り空も好きなので、雨の日もできるだけ傘はさしたくない。スイッチが入らない時には三駅くらい平気で歩いてしまうから恐ろしい。

しかし、ここ最近、皆目やる気が出てこない。五月病を引きずっているのか、夏バテなのか、理由はわからないけれど、いかんせん仕事が進まない。だから、この1カ月ほどは今まで以上に身体を労わるようになった。ヨガやサウナ、温泉に行く頻度が圧倒的に増している。睡眠時間を意識するようになった。夜中に原稿を書かなくなった。

先日、整体をしたもらったのだけれど、ぼくの体の状態を見て「頑張ってるね」と言われた。そうか、ぼくは頑張っているのかと思った。このままやる気全開には戻らなくてもいいんじゃないかと思った。

しかも、やる気がなくなったからか、圧倒的に感受性の閾値が下がっている。くだらないことで笑ったり、悲しんだりできる。足元の健気なお花に気がつける。街中ではしゃぐ子どもを見ると、その未来を憂えて泣きそうになる。

ここ最近のくだらないニュースの数々や痛ましい事件を見ていると、いたたまれないし、心がしんどくなる。発言の上げ足をとっては批判し、取り下げる。何をやっているんだろうか。

だから、空を見て、リセットをする。そうすると、そんなくだらないことに気を使うことが馬鹿馬鹿しく思えてくるし、SNSやメディアに躍らされてヤキモキしている人たちが可哀想にも思えてくる。真理も真実も、そんなところにはない。

この夏、少し変われそうな気がする。やる気が完全に回復することはないかもしれないけれど、それはそれで、もう少し人間的に生きていけそうな気がする。そのための準備というかインプットを増やしたい。つまらない人たちとは違うところを見つめて、生きていきたいと思う。

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