#005 自分なりの精一杯
マン島TTに出たのは2010年のことだ。
600ccがメインのクラスにエントリーし、2ヒートで行われた決勝は50位と49位。この数字は完走したライダーの中、最下位を意味する。あの当時の原稿には恥ずかしくって、あまりそう書かなかったけれど。
順位、もしくはタイムで評価される競技者として後悔がないのかと言えば、もちろん嘘になる。なるけれど、あの時の僕には精一杯だったんだよ。
とにかくマン島TTに出る。その一心しかなかった。衝動だった。
エントリーが受理され、マシンと工具と一切合切の必要なモノを詰め込んだハイエースを運転してグランドスタンドに辿り着いた時、だから僕のレースはほとんど終わっていたのだと思う。
マエジュンさん(前田淳選手/2006年のマン島TTで死去)と交わした「いつか自分もマン島TTに出ます」という約束。それが達成できた時点で終わっていたのだとも思う。
当時手伝ってくれた人、助けてくれた人、応援してくれた人にはちょっと申し訳ない気持ちはある。でもどうか許してほしい。とにもかくにもあの場所に辿り着いたんだよ。不甲斐ない結果だったけれど、あれが僕なりの精一杯だった。