#499 力の合わせっこ
NHK BSで放送している『駅ピアノ・空港ピアノ・街角ピアノ』という番組がとても好ましく、朝ごはんを食べたり、昼ごはんを食べたりしながら時折見ています。
たとえばもし。
市の若い職員さんや、商店街の企画担当さんが「あそこの空いているスペースにピアノを置くってどうっすか? それで、通りすがりのひとに自由に弾いてもらうんすよ」なんて言ったとします。
それを聞いた上司なり先輩なりは、(はぁ?)と思いつつ、「いやいやいや、ピアノなんてどこにあんだよ? あてはあんのか? あっても予算どうすんだよ。置いたら置いたで調律とかしなきゃいけないんだろ? そのコストとか維持費は? 壊れたり、傷ついたりしたら誰が責任とんだよ。そもそもピアノ弾けるやつなんて、そうそういねぇだろ。いても、みんなの前でいきなり弾くか? 普通」と、可能性の芽を摘む方向に話を持っていくのではなかろうか。この場合、自分は明らかにそっち派な気がしていて、自分で自分にがっかりです。
そういう最初の難関を越えて、駅や空港や街角にピアノが置かれたこと。それを弾くひとが結構いること。なんなら歌い出すひとだって珍しくないこと。当然だけど、鍵盤の前に座るすべてのひとに人生があること。それをひとつひとつ拾い集めていけば、これはもしかすると番組になるのでは? と考えたひとがいたこと。
いろいろなひとの小さな思いつきや行動が合わさって、それでもやっぱりささやかといえば、ささやかなのだけど、確かな力を持つこと。それが感じられてとてもよいのです。