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平等について

平等について

本記事は Engineering Manager Advent Calendar 2021 の17日目のものです。

WealthPark株式会社でVPoEをしている藤井です。
簡単に自己紹介させていただくと、
WealthParkという
"オルタナティブ資産への投資機会をすべての人へ届ける"
ことをミッションとして掲げているスタートアップでエンジニア組織のマネジメントをしています。ひとつの特徴は、エンジニアの8割くらいは外国籍な環境であることです。

最近、Engineering Managementとは別文脈ではありましたが、"平等とは何か"ということについて考える機会がありました。平等にしたいかどうか、は別問題として、Engineering Managerとして平等、公平、透明性などについて考えることは少なくないのではないでしょうか。

自分が平等について学んだことを引き合いに出しながら、平等について、基礎的な部分を本記事でまとめていきます。
とは言え、平等については読めば読むほど哲学的な話になっていきますし、平等の概念を本記事で多くをカバーするわけではないので、平等について考えるきっかけ的なものとして、本記事をご活用ください。

平等とは何か

"平等の哲学入門"によると、平等は

2人の人間が平等(均等)とみなされるのは、他の属性が異なっていても特定の属性が等しい場合である。

平等の哲学入門

とあります。例えば、AさんとBさんの年収が等しければ、2人の年収は平等であると言えます。

平等(A=B)

ただ、限りなくAさんとBさんの全てが平等という可能性は低いです。
もしかしたら、年齢が違うかもしれないし、スキルが違うかもしれない。

平等(A=B)?

平等について話をするとき、そこには"対象としている属性やスコープがある"ことが基本になります。
その為、平等を語る上では"何の平等か"ということが非常に大事な着眼点になります。

平等と公平と公正の違い

平等について考える時に、平等と公平の違いについて把握する必要があります。
平等(Equality)と公平(Equity)の違いは、下記の画像が有名ですが、数式で理解することもまた分かりやすいです。

平等(単純平等)
A=B

公平(比較的平等)
A:B = C:D

平等とはまさに、言葉の通り、ある属性において、数値が全く等しいことを意味します。上記のような、年収が等しい状態もそうですし、画像のように皆に全く同じ台を貸し出すことも平等です。
それに対して、公平は比較的平等とも言われ、等しい条件のものは等しく扱い、異なる条件のものは異なっても良いというものです。

例えば、上の年収の話でいうと、スキルを絡めて、スキルが高ければ年収が高くあるべきだ、とするならば、ジュニアなエンジニアは500万、シニアなエンジニアは1500万みたいな形にするのが公平と言えます。

そして、単純平等を比較的平等をどちらも含む、広義の平等という意味で"公正"という言葉が定義されています。

"何の平等か"ということがなぜ大事なのか

例えば、一律時給1200円のアルバイトがあったとします。
これは平等な仕組みですか?

答えは、人による、となります。

例えば、労働時間に対して対価が払われるべきだ、と考えている人がいれば、これは平等であり、公平です。一方、もしも能力に応じて対価が払われるべきだ、と考えている人がいるならば、この仕組みは悪平等であり、不公平である。となります。
その為、その人が何を重視しているか、何が重視されている平等なのかが平等を捉える上で、大きな要素となります。

議論の中で、"平等"という言葉が出た時は、その人の中に必ず主語やスコープがあります。そして、その本質は"何を重視しているか"ということなのです。

例えば、評価の結果を受けたメンバーから、この結果は平等ではない、というフィードバックを受けたとします。それは、その人が重視していること、あるいはこの点においては平等であってほしいと思っていたこと結果について乖離があった、というケースが多いように思います。

  • マーケットバリューに対して

  • 成果に対して

  • フィードバックに対して(フィードバックは良いのに結果が伴っていない、など)

  • 相対的に

  • 会社の業績に対して

一言に平等と言っても、その人がどの点を重視しているか、どの点をスコープにいれて平等を考えているかで、見え方は全くことなってきます。もしも議論の中で自分と違う観点での"平等"という言葉が出た場合は、その人が何を重視しているかに注目してみると、考えがクリアになる場合があります。

事実と規範

様々な平等を考える上で、今自分が話している平等は、事実なのか、それとも規範なのかという2つの区別は重要です。
平等は当然、何かが等しいという事実を示すこともありますが、等しいことが望ましいという規範を意味することもあります。

機会の平等, 機会均等, 結果の平等

先の単純平等や比較的平等に対して近代の話になりますが、平等を時間軸で考える上で有用な話だと思うので扱います。また、平等について話す時、機会の平等、不平等、結果の平等、不平等について話されることは、会話の中で比較的多いのではないかと思います。

機会の平等は、

さまざまな活動を自由に立ち上げる機会を平等に保証すること、別の言い方をすれば、出発点において力の不平等がないことを求めている。

平等の哲学入門

一方で、

諸個人の社会的相互作用の結果生じた富や社会的影響力の不当な格差を是正しようとする「結果の平等」

https://kotobank.jp/word/%E6%A9%9F%E4%BC%9A%E5%9D%87%E7%AD%89-169799

もあります。
機会の平等は平等を時間軸の要素を加えるものだと思います。
また、下記の考え方もイメージがつくかたも多いと思いますが、大事なポイントです。

たとえば出発点の平等が確保されていれば,競争の過程でどのような格差が生じたとしても,それは個人の意志や努力に帰せられるべきものであり

https://kotobank.jp/word/%E6%A9%9F%E4%BC%9A%E5%9D%87%E7%AD%89-169799

機会の平等、結果の平等は平等に時間軸の観点を加えるものになります。
個人的に機会の平等、結果の平等を考えることは、機会の不平等、結果の不平等について考えることと同義であることを強く意識する必要があると思います。
人は生まれる環境や場所を選ぶことはできません。(少なくとも今のところ)。人は生まれながらにして機会の不平等には直面しますし、すくなくとも多くの勝ち負け(結果の不平等)に直面しながら日々に向き合っています。

付け加えるならば、結果の平等の説明はそうあってほしいという規範そのものです。
結果は不平等と言われるように、実際は結果は平等ではなく、結果の平等を目指すものであることが多いです。

平等についてもう少し知りたい方

ここまでいくつかの概念を紹介をしました。平等という概念は、歴史が非常に深く、歴史上の色々な方々が平等について考えられているので、それを調べてみると参考になる点があります。(ただ、それらをここで綺麗にまとめるほどの体型的な知識は私にはありません。)
平等について考える時、特に平等のスコープの作り方について参考になる箇所が多くあります。また、この平等の話を聞いて、評価の話が思い浮かんだ方は、分配的正義について学ぶことも参考になる話が多いと思います。
また、冒頭でも紹介した平等の哲学入門は非常に内容が多いですが、包括的に平等に対する理解を深める本としてもおすすめです。

まとめ

全然Engineeringな内容ではないと思われた方、すみません。
まとめとして伝えたいことは2点です。

平等という言葉を使う時 / 頭に浮かんだ時

  • その平等のスコープは何なのか(だれ / なに)

  • その平等は単純平等なのか、比較平等なのか(平等なのか公平なのか)

  • その平等は事実なのか、平等にしたいという規範を示しているのか

  • その平等の時間軸はいつなのか(機会の話なのか、結果の話なのか、機会・結果のどのタイミングのことを言っているのか)

これらを一度整理することで、自分が言っている平等がつまるところ何を言っているのか、整理できると思います。
その上で平等というニュアンスを伝える時、上記の観点を合わせてメンバーに伝えることで、平等の認識の齟齬を減らすことができると考えています。

平等を目指すべきなのか?

今回は、Engineering Manager Advent Calendarのテーマとして、"平等"について書きましたが、決してEngineering Managementとして、平等こそが目指すべき形であるということを述べたい訳ではありません。

経済学者のサイモンズは、”平等は自由の達成のために必要な規範と捉え、平等化自体を目的としていない”と言っていますが、これが個人的には比較的しっくりきています。

平等そのものが目的になることはあまりないと思いますが、組織でうまく行っていないメンバーがいたり、一見平等、正しそうに見える施策が、他人にとっては不平等になっていたりすることはあります。

あなたが他の人の平等という表現に違和感みたいなものをもしも感じることがあれば、平等をざっくり何かが同じことと捉えずに、それが何の平等なのか、いつの時点での平等なのか、スコープは何なのか、と考えることでよりその人を理解することにつながることがあります。

Engineering Managerとして、メンバーの生産性を高めたり、より成長できる機会を提供したい!と考える時に、平等や、機会の平等について考えることは、例え暗黙的であっても少なからずあると思います。

本記事がそのような方の思考の整理に繋がれば幸いです。

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