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会えて よかった 【068/200】
ヤマカワタカヒロです。
今日は、ある作品について、書きたいと思います。
「会えて よかった」
永井真理子さんの最新アルバムです。
テレビアニメ「YAWARA!」の 主題歌「ミラクルガール」や、「邦ちゃんのやまだかつてないテレビ」のエンディングテーマで紅白歌合戦でも歌唱された「Zutto」で知られる永井真理子さん。
当時小学生だった僕は、永井さんのボーイッシュなかわいさと、元気をくれる歌声に、心惹かれました。
ちょうど、歌番組を毎週楽しみに見て、歌手に憧れるようになった年頃です。
「Zutto」は林間学校のレクリエーションでみんなで歌ったような記憶があります。
あれから30年経って、僕はまた永井真理子さんに出会いました。
きっかけは下北沢LOFTでの前田克樹さんとの出会い。
現在音楽家として活躍されている前田克樹さんと永井真理子さんのデビュー前からのつながりを知り、「Ready Steady Go!」や「23才」が前田さん提供曲だと知って、子どもの頃、テレビの中で流れていた音楽が、急に自分の人生の目の前に実在として現れたような気がしました。
音楽は時空を超えて、感動を何度も届けてくれる。
そして、それを生み出してくれるのが、人と人との出会いなんだと思います。
さて、本題のアルバム「会えて よかった」について。
楽しみにしていたCDが届いて、1曲目から7曲目まで、通して聴きました。
やっぱり、CDアルバムは、何の事前情報も入れず、頭から通して一気に聴きたい。
聴く前は、1曲ずつ音楽的な観点で解説を書いてみようかなんて思っていたのですが、甘かった。
細かく分析して聴く、なんてことはできず、歌を聴き、楽器の音を聴き、歌詞を読み、全身で作品を味わうことしかできませんでした。
僕の根っこはやっぱり音楽家じゃなくて、素敵な音楽に憧れる音楽ファンなんだなと、改めて実感。
それでも、このアルバムの良さを一人でも多くの方に伝えたいので、僕自身が収録曲の一曲一曲から感じたこと、そしてアルバム全体を通じて感じたことを、精一杯書いてみたいと思います。
1.Restart(作曲&編曲:前田克樹、作詞:永井真理子)
「会えて よかった」は、前田克樹さん提供曲「Restart」で幕を開けます。
イントロから圧倒的な希望を見せてくれる、まさに1曲目にふさわしい楽曲です。
「Restart」というタイトル。そして、人生の中で出会う数々の痛みや悲しみを受け止めた上で、それでもなお、地に足をつけてもう一度走って行こうと語りかける永井さんの歌詞。その歌詞に応えるかのような前田さんの極上のリズムとメロディとサウンド。タイトル・メッセージが先にあって、それに合わせてお二人が曲と詞を書いたのか、詞先なのか曲先なのか、すごく聞いてみたい。メッセージと世界観、言葉と音楽が一つに混じり合っているからこその「圧倒的な希望」なんだろうと思います。
あの日に君の小さな部屋で録音したあの歌
僕らの人生が変わってゆくこと 誰も気付かなかったよ
(2番Aメロより)
これは、永井さんのデビューのきっかけとなった「One Step Closer」のデモテープのことなのでしょう。
そのふたりが、時を超えて「Restart」という楽曲を共作したという物語のような事実に、心が震えます。
2.春風の言葉(作曲:マシコタツロウ、作詞:永井真理子、編曲:ha-j)
「Restart」に続いて、タイトル通りの春風を心に吹かせてくれる2曲目。
作曲は一青窈さんの「ハナミズキ」「もらい泣き」で知られる作曲家マシコタツロウさん。
歌詞カードに掲載されているメッセージの中で、マシコタツロウさんが永井真理子さんを知ったきっかけは、前田克樹さん提供楽曲「Ready Steady Go!」とのこと。素晴らしい音楽家の皆さんが、こうやってつながっていくのかと、音楽の力のすごさを感じます。
誰かを嫌うのでなく 自分を責めることなく
明日を輝かせるために何かができる
(1番サビより)
今年のような静かでみんなでがんばらなければならない春の日に、こういう歌を聴きたかった。
ダメなところも弱さも許して認めてくれる、そして、勇気を与えてくれる、優しさに満ちた歌です。
3.ヘッドフォン(作曲&編曲:前田克樹、作詞:永井真理子)
永井さんが自身の内面を素直に語りかけてくれるような3曲目。
冒頭の「ヘッドフォンの中は 自分を覗ける部屋」が、この歌の世界観を一言で言い表しています。
暗い部屋で一人、眠れない夜にヘッドフォンで何度も聞いた曲のことを思い出しました。
僕自身、一人の時間がとても大切で、そこには大好きな音楽が必要で、まるで自分のことを歌ってくれているような、そんな気持ちになりました。
きっと僕は、この先また苦しくて眠れない夜がやってきた時、この曲をヘッドフォンをしながら聴くことになるでしょう。
そういう歌がこの世に存在してくれる、ということは、本当にありがたいことです。
いつも思っているよ 照れ臭くて言えない
「会えて よかった」伝えられるのかな
(2番サビより)
この曲の中に、アルバムタイトル「会えて よかった」が登場します。
サビのメロディの中でも最も印象的なフレーズに、この言葉が使われている。
一人の時間に、自分を向き合う部屋の中で、永井さんはこれまで出会ってきた大切な人たちへの想いを言葉にしたのでしょうか。とても、心に残る楽曲です。僕は、この曲に会えてよかった。
4.大人になるためサヨナラしたの(作曲:阿比留淳司、作詞:永井真理子、編曲:COZZi)
僕ら世代向けのポカリスエットやカルピスウォーターのCMタイアップにしていただきたいような4曲目。
爽やかさと甘酸っぱさと、大人の洗練された恋心を楽曲にするとこうなるのだろうなと思いました。
土曜のカフェテラスで、昔、大好きだった人を見かけた。
そんなワンシーンに巻き起こる心の中の嵐と凪が、おしゃれな街の風景と共に過ぎ去っていくような楽曲です。
他の曲と比べて3:42と比較的短く終わってしまい、まるで楽曲に置いてけぼりにされるような感覚に陥りました。
曲を聴いて、歌詞を読んで、もう一度歌詞を読みながら聴きたくなる曲。
大人になるためにサヨナラしたあの日と、
大人になったからサヨナラできた今日。
時を超えることで役割を果たす恋心がある。
素敵なことを、この曲に教えてもらいました。
5.透明な糸(作曲/作詞/編曲:マシコタツロウ)
ピアノとボーカルだけ、混じり気のない美しいバラード。
ライブで、生音で聴きたい。真っ先にそう思いました。
人を愛することの喜びと、切なさと、苦しさを凝縮したような4分16秒。
曲の素晴らしさは何の説明もいらない。ただ、聴いてほしい。
永井さんの声が「Zutto」の頃よりも、深みとか慈しみみたいな要素が増していて、心にすっと沁み渡るようなそんな楽曲です。
歌詞について、触れておきたいことがあります。
この楽曲は、2番サビの後に続く変則的な大サビ的なパートで終わりを迎える構成です。冒頭から胸をわしづかみにされるような心情描写が続く中で、その変則的な最後のパートの最後の一節だけ、結論をぼかすように比喩的な表現で綴られているのです。
あと少しだけ 思い出の中で
そっとそっと眠らせて
透明な糸にくるまって
この一節にマシコタツロウさんが込めた意図、永井真理子さんの解釈はそれぞれどのようなものだったか。
それはこの曲を何度も聴き続けた中で、僕自身が見つけ出すものなんだろうと思います。
6.逆転の丘(作曲:マシコタツロウ、作詞:永井真理子、編曲:ha-j/Guitar solo 山口俊樹)
「透明な糸」と打って変わって、まるで雨上がりのキラキラした街に駆け出すようなアップテンポな楽曲。
無邪気に踊るようなベースラインがワクワク感を与えてくれます。
マシコさんの曲の素晴らしさに加えて、編曲者であるha-jさんのクリエイティブが炸裂しているのだと思いますが、音の入れ方・抜き方、リズムの変え方、サビの最後の3連符の入れ方など、個人的に大好物なものばかりでごちそうさまでしたと申し上げたいところです。クレジット表記されている山口俊樹さんによるギターソロも最高。こういうギターソロをいつか弾いてみたい。
間奏明けの落ちサビはライブ会場全体でクラッピングしたい。絶対楽しい。
今、この曲がつくられたタイミングからは想定されていなかった事態が起こっていますが、僕はこの曲を聴いて、
「ライブハウスでまた必ず会おう」
そんな想いを胸に抱きました。
音楽を愛するみんなが、この苦難を乗り越えて、逆転の丘でまた出会えることを祈っています。
7.巻き戻したい日(作曲&編曲:前田克樹、作詞:永井真理子)
「会えて よかった」を締めくくる最後の曲。
アルバムの最終曲はこういう曲であってほしい、そう思わせてくれる掛け値なしの名曲です。
「〜空の上の親友Mに捧げます〜」とある通り、永井さんの個人的なメッセージソングなのだろうと思います。
時を超えて合流する想いもあれば、時間の流れが二度とつながることを許さない想いもある。
でも、現実がそうだとしても、想いが時を超えて、場所を超えて、届くことがあると僕は信じたい。
巻き戻したい日は、巻き戻せない日。
そうだとしても、そうだからこそ…
「会えて よかった」
アルバム全編を通じたメッセージは、親友への想いで幕を閉じます。
全7曲、たった34分の物語にもかかわらず、久しぶりに心が大きく動き、涙がこぼれてしまうアルバムでした。
正直、ここまでの作品だとは思っていなかったし、今日のブログも、こんな内容になる予定ではありませんでした。
素晴らしい作品に出会えた幸運に、ただただ、ぼんやりと身をまかせながら、このブログを書いています。
今日のこの感動を味わうまでに、僕はどれだけの出会いに感謝したらいいのだろう。
永井真理子さんに、
「会えて よかった」という作品に、
この作品を生み出した関係者すべての皆さんに、
前田克樹さんをはじめ、この作品に出会う縁をくださったすべての皆さんに、
「会えて よかった」
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