家族・私有財産・国家の起源

 フリードリヒ・エンゲルス著、戸原四郎訳「家族・私有財産・国家の起源:ルイス・H・モーガンの研究に関連して」を読みました。岩田温氏が、フェミニズムを理解するために良いとにお勧めしていて、故・安倍晋三氏も読まれたとのことで手に取りました。

 バッハオーフェンの「母権論」という本から引用し、人類は当初無拘束な性的交渉の生活を送っており、それによって父性の確実さをすべて排除されてしまい、血統は女系でしかたどれなかった、女性は母として高度の尊敬と信望が払われており、完全な女性支配にまで高められたとありました。。更に「女性がひとりの男性に専属する一夫一婦制への移行は、太古の宗教戒律の侵害(すなわち、実際にはその女性にたいする他の男性たちの古来の要求権の侵害)を内包していて」ともあり、そうした起源立ち返るべきと言うのが本書の主張のようです。

 婚姻にも、現在の日本のような一夫一婦制だけでなく一夫多妻制、一妻多夫性、集団婚という形があるということでした。一夫多妻は文字通りで、産油国のお金持ちが奥さん何人もいるなんて言うさもしいイメージを抱いてしまいます。一妻多夫は聞いたことないけどあるのかもしれないくらいに思っていましたが、チベットなどで存在するのだそうです。最後の集団婚が先述した「母権論」にあるようなコミュニティだということでしょう。

 そうした形態から、徐々に文明として発展し始める、つまり狩猟採取から牧畜や農産といった形に変わっていく中で集団婚は廃れていきます。牧畜や農産などにより所有するという概念が生まれ、牧畜などで家畜を見張る単純労働に奴隷が使われるようになります。この辺りは、ちょっと複雑でしっかり読みとれているか微妙ですが、大雑把に言えばそんな感じだと思います。

 そうした発展から国家が形成されるようになりますが、ここも大雑把にまとめると国家よりも氏族が良いから、当時に戻そうみたいな論調でした。最後にルイス・H・モーガンの「古代社会」からの引用で「たんなる富の追及は人間の最終使命ではない。文明の開始以来過ぎ去った歳月は、人類の過ごした生存期間の一小部分に過ぎず、また人類の今後の期間の一小部分にすぎない。社会の解体は、富を唯一の最終目標とする歴史的道程の終末をなすものとして、我々の目前に迫っている。なぜならば、そのような道程はそれ自身の破壊の要素を含むからである。」とありました。

 こういう思想が根底にあるから、訳の分からない行動をする方がいるわけですね。ぼんやりと理解できた程度なので、もう少し理解を深めたい気持ちもありますが、再読するかは微妙です。

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