アンビシャス
鈴木忠平著「アンビシャス 北海道にボールパークを創った男たち」を読みました。著者は「Sports Graphic Number」編集部を経て、ノンフィクション作家、スポーツライターとして活動されている方です。「嫌われた監督」、「虚空の人」などの著書があります。
サブタイトルにある通り、日本ハムファイターズの新しい本拠地「ES CON FIELD HOKKAIDO」、いやそれも含めた「北海道ボールパーク F VILLEGE」ができるまでの紆余曲折が書かれています。本拠地を東京ドームから札幌ドームに移転したところにも触れていました。札幌にプロ野球を年間数試合誘致するという計画で、当初は西武ライオンズに話が行っていたそうです。しかしながら、日本ハムファイターズが本拠地移転を検討していることから、札幌市がライオンズに頭を下げて、ファイターズを誘致したとのことでした。
札幌ドームの移転については、ファイターズがチケット収入以外の、グッズ販売や飲食の利益を得られないことが原因と耳にしたことがありましたが、それだけではなく、札幌ドームの改修や運用方法について、札幌ドームが譲歩を全く見せなかったところが原因だったようです。この辺りは、お役所仕事の弊害を見せつけられました。カープについても触れられており、カープは広島市の施設であるマツダスタジアムの指定管理者となっており、運営の自由度が高いようでした。同じように指定管理者を目指すも、それについての交渉もけんもほろろだったようです。
ところどころ、心地よくない表現があり、一番引っかかったのは「プロ野球十二球団の中でもっとも人口の少ない都市は埼玉西武ライオンズの所沢市である。それでも北広島の十倍近い約三十五万人が住んでいる。」という所。北広島市の人口は5万人以上と本書にもあるのですが、三十五万人を十倍近いと言ってしまう所とか、ジャイアンツの文京区の人口が二十五万人弱だとか、いろいろと気に入りませんでした。
新庄監督のエピソードもいくつか登場しましたが、その中でも選手時代に初任給で勝った7500円のグローブを何度も修理して使いとおしたというお話に、好感度爆上がりでした。
球団職員、札幌市役所、北広島市役所、マスコミに所属している人からの目線で書かれており、それぞれ高校時代に甲子園を目指した方もいて、当時の思い出から野球に対する思いも綴られていました。何となくこの辺りは重松清臭がしましたが、ビジネスの要素もしっかりと織り交ぜて、バランスよく仕上げてあるように感じられました。