吉野家で経済学


 安部修仁・伊藤元重著「吉野家で経済学」を読みました。昨年読んだ「吉野家の経済学」が2002年のものですが「その後の吉野家」についての対談、つまりは続編です。

 私がアルバイトをしていた時も含めて、吉野家はカットして冷凍した肉を使用していたのですが、冷凍庫から冷蔵庫に移して寝かせる「熟成肉」に切り換えていたのだそうです。アルバイト時代は肉を煮る手順に寄って結構味の違いが分かったし、社会人になってからお店に行った時も多少の味の違いは把握出来ていたつもりだったのですが、塾生肉にかわっていたことはまったく気が付きませんでした。なんとも残念な舌です。熟成期間は2週間とのことですが、保管倉庫のコストアップはかなりモノではないかと思います。2014年の4月から順次導入しているとのことですが、2014年4月1日には280円から300円に値上げをしています。とは言えこの時は消費税が5%から8%に変わった時ですから、熟成肉との関係性はなんとも言えないところです。税込280円だと消費税は13.3円、266.7円に対して消費税8%になると総額288円ですから、290円でも転嫁できるところです。プラス10円で保管倉庫のコストをまかなえたかというとちょっとわかりませんが、この辺りは相場と兼ね合いでしょう。また、290円という設定よりも300円という設定の方が小銭に惑わされずに生産性が上がるような気もします。

 BSEの時は、時系列としては熟成肉より前の話になりますが、牛肉が無くなってしまうのですから大変なピンチです。しかも、日本政府は異例の早期対応で輸入をストップしたと言いますから驚きました。時代が違うとはいえ、コロナの時もガッチリ渡航者をストップしてくれればあんなことにはならなかったのにと思ってしまいました。そうした危機を脱するために、グループ会社も含めて新メニューの開発を行い、2003年12月に輸入がストップしてから売上は落ちたものの、翌年の9月には黒字化を果たしています。昨年読んだ「吉野家~もっと挑戦しろ!もっと恥をかけ!」には、「並盛250円」セールの失敗について書かれていましたが、これもかれこれ大変な状況で、それが2001年のことでした。まさしく息つく暇もないような状況で、FCの方々も良くついていったものだと思わされました。

 FCともなれば、皆さん一国一城の主ですから、社員を説得するよりも大変だと思います。そうした中でFCに対しては「最初は赤字になるだろうから、見切る人は見切っていただいて結構。店舗の資産価値にプラスアルファを付けて買い取ります」と交渉していたそうです。一方、社員に対しては「大丈夫、先輩たちのお陰で1年や2年、全店が店を閉めても君たちの給料は払えるから」とも話していたそうですが、そんなことが言えるのは内部留保があってこそなのでしょう。

ちょっと長くなりましたので、明日に続きます。

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