ラヴクラフト全集 1(ネタバレします)
H・P・ラヴクラフト著、大西尹明訳「ラヴクラフト全集 1」を読みました。著者はアメリカの小説家で、怪奇小説・幻想小説の先駆者的な方です。メタリカの「Ride the Lightning」の8曲目「The Call of Ktulu」の「Ktulu」の意味を調べてみると、著書とその友人の作家によって架空の神々、地名、書物等の名称を貸し借りすることで作り上げられた架空の神話だということでした。本書には「インスマウスの影」、「壁のなかの鼠」、「死体安置所にて」、「闇に囁くもの」の4編が収録されています。それぞれ1936年、1925年、1925年、1930年の作品です。
「インスマウスの影」の「インスマウス」は架空の港街の名前で、冒頭「連邦政府の役人たちは、インスマウスというマサチュセッツ舟のむかしの港町ある事情について奇怪な秘密調査を行った。」、「抜け目のない新聞記者連中は、逮捕された人間の驚くべきその頭数と、逮捕にあたって当局の動員した人員のこれまた異常に多い数と、さらに囚人たちをこっそり処刑したという点をあやしいとにらんだ。」とあり、もうこのあたりから続きが気になって仕方がありませんでした。
この街自体の描写、また町に住む人の描写が気持ち悪く、したくもない想像を掻き立てられました。この街の漁港から少し沖へ出たところに暗礁があり、その暗礁に棲む魚類のバケモノと町の人が交配し、徐々に街からまともな人間は逃げていき、バケモノと交配して生まれた者たちが街まちを支配していくというお話です。主人公が好奇心に駆られてインスマウスを訪れると、唯一のホテルで深夜バケモノに襲われ、命からがら逃げおおせるという話でしたが、ラストはどう捉えてよいやら、なんとも読後感のよろしくない内容でした。
「壁の中の鼠」はちょっとつかみどころがなく、ひたすら不気味でした。「死体安置所にて」は少しトルストイを彷彿とさせてくれたように思います。どちらも不気味な描写が秀逸で、ハッキリと終わらせてくれないので、読後感も気持ち悪いものでした。
長くなりましたので明日に続きます。