日本の美学 8

 続きです。

 「生命燃焼と武士道」の講演が終わり、質疑応答に入ります。「自分の好きなことに熱中してボロボロになってくことでも良いのか?」という質問に対して、「自分の好きなことだと、かえってボロボロになるまでいきません。元々、昔は趣味などというものを問題にしている人はいませんでした。実は趣味というのは我儘の極致なのです。」とありました。とっても厳しいお言葉です。「充電期間」、「休養期間」なんて言う言葉も出ましたが、「あなたは毎日睡眠時間をとっていますね」と喝破されてしまいました。それくらい真剣に使命に向かっていかないとボロボロになって、生命燃焼出来ないということでしょう。

 では、自分の身体も顧みずにボロボロになるまで使命に向かっていけばよいのかと言えばそうではなく、「志が立っている人は、自分の体の管理や調整も非常に綿密です。必ずやらなければならないのが志なので、今日がよくても明日が駄目ということは出来ないのです。だから、すべての面で、自己管理も含めて立てた志を実行していく。」とありました。志が一番で、そのためにどうするか、必要であれば自己管理もしっかりしなければならない、やみくもにボロボロになっても駄目だということでしょう。

 家族や会社組織の中で、著者のような考えが崩れてしまうがどうしてなのか?という質問に対して「それは自分の魂の中にしっかりと志が立っていないために、周りに動かされているということです。だから自分がきちんと志を持っていれば、中心を動かさないで、いくらでも枝葉の部分で家族や周りと合わせていくことができます。」と答えていました。ちょっと意外な答えでしたが、自分ばかりが著者の思想の影響で昂っていたとしても、周囲と軋轢を生んでしまえば意味がありませんし、著者ご自身も、ここまで生きて来られて、会社経営もされているのですから、どこかで「周りと合わせる」ということがあるのでしょう。それとも、著者は全く合わせることなどしないのですが、一般の方向けにこのような答えをくれたのではないかとも思います。やたらと周囲と軋轢を生むのも良いことではありませんが、どうしても譲れない部分という所があるはずなのでしょう。そして、それは志が立っていないと、線引きもはっきりせずに、崩れてしまうのではないかと思いました

 続きます。

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