日本の美学

 執行草舟著「日本の美学」を読みました。著者は実業家で、著述家で歌人と三足の草鞋を履く方です。読ませて頂くのは本書で3冊目。1冊目の「悲願へ」は大変苦戦しました、いや、鋭意苦戦中ですが、「生くる」を経て本書を読んで少し理解が進んだように思います。

 本書は参政党の神谷宗幣氏が主宰する「イシキカイカク大学」での講演録です。著者を呼んで講演をされているというだけで、応援したくなってしまいます。「生命燃焼と武士道」、「日本人の読書」、「これからの日本を考えるために」、「政治家に必要な美学」の4編とそれぞれの質疑応答が掲載されています。

 冒頭「現代人は、多くの価値を求め過ぎたのではないか。私にはそう思われてならない。多くの意見と多くの価値に、多くの人々が押し潰されようとしているのではないか。」とありました。これはちょっとわかるような気がします。昨今言われる多様性なんていうのは、その際たるもののようにも思えます。そうした現代に対して、著者が価値を提供できる、著者の思想が必要とされるとするなら「それは『人生は単純なものである』という真実しかない。」とのことでした。続けて「私は一つの生き方しか、する気がない。私は一つの価値しか持つつもりがない。私はひとりの人間しか愛するつもりがない。私の国は一つであり、私の家族は一つしかなく、私の思想もまた一つしかない。人間にとって、大切なものは一つしかないのだ。」とありました。これはかなり厳しいお言葉ですね。全編を読んでから、改めてここを振り返るとその厳しさが倍加されます。そして、その一つを見つけ出すためにだけ、私の思想とその著作群そして諸講演の価値があるということでした。著者は若くして、ご自身の「一つ」を見出されたと読み取れますが、そんな人間は稀有で、著者の思想をよく勉強してから考えないと、おかしなことになってしまうのでしょう。

 本編に入り「命を刻む」という言葉がありました。所属する合唱団で、作詞:小椋佳、作曲:堀内孝雄の「山河」を歌っていますが、その中に「そこに 生命をつなぎ 生命を刻む」という歌詞があるのを思い出しました。著者曰く「自分の命を刻んで生きるのが、本来の人間の人生です。」とありました。誰でも日々、死んでしまうその時に向かって命を刻んでいるという解釈も出来ますが、著者は自分のためではなく、国のため会社のために自分の命をすり減らすということが生き甲斐になっていくと言っています。次回、「山河」を歌う時の思いが間違いなく変わるような言葉を頂きました。

 少し長くなりましたので、明日に続きます。

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