クリスマスコメダ

りんちゃんへ

プレイリストをありがとう。日本の冬のバラードは馴染みがなかったからどれも新鮮な気持ちで聴いております。今は井上陽水と奥田民生のクリスマス・バニラシェイクを聴きながらこのコラムを書いている。

突然だけど、りんちゃんは将来の夢とかある?自分の夢を公にするのは恥ずかしいけれど、私は最近エッセイストになりたいと思っている。でもそれってどうやってなるのだろう。人それぞれなのだろうけど、末井昭や雨宮まみは出版社に勤務していたみたいなので、私もそういうところで働いてみたいな、自分のしていることを活かしてみたいと思って、今働いているバイト先の人に就活するんでやめますと言ったのがおよそ3ヶ月前。

気づいたら年の瀬、町はイルミネーションで華やかなクリスマスムードで溢れているが私の仕事はなに一つ決まっておらず、その間一体何をしていたのだろうかと記憶を遡ってみたところ、りんちゃんとのこのコラムを書くために何か面白い生活にしたいと思って、ホットワインや唐揚げ作り、一人岩盤浴へ行ってみたりして、でも一人だと寂しいなあと思っていたり、文章を書くのって難しいなあとへこんだりして就活の存在は頭の端にうっすらとあるけれど、とくにアクションを起こすこともせずに淡々とした毎日を送っていた。

新しい社会に踏み出すことは勇気がいるし、いまのバイトをずっと続けていく未来は怖い。自分の人生なのだからこんなこと言ってられないけれど、これからどうやって生きていったらいいのだろうかと華やかなこの時期とは相反して暗い気持ちになっていた矢先、見つけた会社に電話してみて面接が来年の年明けとなったのでそれまで暇だなあとケータイで漫画を読んだりしてお気楽に過ごしていたらクリスマスになっとりました。

りんちゃんはきっと卒業制作で今日のイブも朝から晩まで忙しく制作しているだろうと思うのに対して、私はというとバイトが休みだったので昼過ぎに目が覚めて布団の中から腕を伸ばしてリモコンを掴み取り、エアコンをつけて二度寝をし、起きたらスマホのゲームを1時間ほどしてからのそのそとベッドから出た。溜まりまくった洗濯物を回し、うどんを炒めてテレビをつけ、もそもそと食べて番組のイルミネーション特集を乾いた瞳で見つめてた。
その後またゲームをやって、ブックオフで買った本を読んでいたらうとうとしてきてコタツで眠り、気がついたら外は暗くなっていて、だらしない服装でコンビニへ行って地域のゴミ袋と20円引きされたファミチキを買って食べ歩きながら落ち葉を蹴って帰宅した。
夜に、昼の残りの焼うどんを食べているとなんとなくちょっとさみしい気持ちになったので近所のコメダにそそくさと移動して今このコラムを書いている。
店内は一人で来ている客が多く、いつもより静寂さが際立った中クリスマスソングが響き渡っているその異様な空間にひっそりと身を潜めていたら、後から来店したカップルが楽しそうにシロノワールを食べはじめたことをきっかけに店内の雰囲気はうって変わってガヤついた。イヤホンで耳を塞いで、りんちゃんプレイリストに入っているヴィンス・ガラルディ・トリオのChristmas Time Hereを聴いて心染み入るいい曲だなあとココアをすすった。

話は戻って、これからもし出版社で働けるようになったとしてもそれだけじゃエッセイストにはなれないし、何かが特化した人や何者かになった人がエッセイを書いてその人の生活が気になるような人がその本を読んだりするんだよな。出版社で働けることが決まったわけじゃないし、まだ面接さえもしてないのだけど自分のこの選択が間違ってないかと不安がよぎる。しかし今の私はなんにもないので今日はただクリスマスに祈る。この小さな古びたコメダから、遠くの夜空に浮かんだ天使たちを思い浮かべてメリークリスマスと豆菓子をかじる。

ゆみより