私と音楽の始まり
子供の頃の記憶。
近所の「パンダ公園」と名付けていた遊歩道沿いにある家から、いつも美しいピアノの音が聞こえていた。それが聞こえると、一緒に手を動かしてピアノを弾いている気分になっていた。4歳ごろの記憶。
私は三人兄弟の末っ子として、上の兄姉よりも9歳も離れて生まれてきた。小さい頃は、よく可愛がれていたと思う。家に近所から貰った電子オルガンがあって、それを弾くのが楽しくて、誰に習うわけでもなく両手をカチカチ動かして楽しんでいた。親戚の家に行くと、ピアノがあって、従姉の楽譜を自分で読んで弾いてみたりして、誰と遊ぶよりもピアノをピコピコ弾くのが本当に楽しかった。
幼稚園や小学校のお友達はピアノを習っている子も結構いて、それがとっても羨ましかったのだけど、お月謝がかかるのを親に迷惑かけられないと子供なりに考えていて、ずっと一人で弾いては我慢していた。小学3年生になった時、同級生が月5000円で習っていると聞き、これならお母さんに頼めるだろうかと、思い切ってお母さんに打ち明けてみた。5年越しの密かな願いだった。お母さんはそれを許してくれて、6月からピアノ教室に通うことになった。初めての習い事だった。
週一回30分の夢のような時間。行くと先生が出席ノートにスタンプを貼ってくれる。そんなことよりも、ピアノに触れることが本当に幸せで、音に耳を傾けることがとてつもなく幸せだった。時間を忘れる体験は、これが人生の最初だったかもしれない。それくらいに、ピアノに触れて、黒い音符の羅列を読み解いて、指で音にしていく作業が楽しくて仕方なかった。ピアノの先生になりたいと思った。
せっかく親に月謝を払ってもらったのだから、一回一回のレッスンを隅々まで習いたい、そしていつかピアノの先生みたいになることが夢だった。
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