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母と娘から始まる和合世界への道
●Human Co-begomingとは
他者と共に人間的に変容する「Human Co-becoming」という日本型ウェルビーイングの新しい理念を提唱したのは東京大学東洋文化研究所所長の中島隆博教授であり、京都フォーラム30周年記念誌『公共する経営一みんなの幸せがわたしの幸せ』(服部英二・中島隆博・矢崎勝彦編、一般財団法人京都フォーラム発行、東大出版会編集・制作協力,2023)の第2部「学識者による発題」の2章「Human Co-becomingとしての人間」において、この新理念のポイントについて次のように解説している。
<何らかの道を通ってようやく人間的になっていくものではないか。人間的になりゆくもの。これがHuman Co-becomingの第一のポイントである。第二のポイントは、ひとりでは人間的になることはできず、必ず他者とともに人間的になるほかないということだ。Coに込めたのはそのような思いである。
ここで思い起こされるのは、仏教の僧伽(サンガ)である。
よく「仏、法、僧」の三宝を敬うと言うけれども、ここでの僧は僧伽(サンガ)を指している。それは四人以上の修行者が集まった集団のことで、それが意味しているのは、仏の教えにたったひとりで対峙するのではなく、四人以上で一緒になって向かっていくということだ。ここには人生の先達であるメンターも含まれている。ひとりではなく、他者とともに、複数的な仕方で人間的になってゆくのである。>
同書の第3章に書かれた、今安志保・琴奈「母と娘から始まる和合世界への道」の冒頭には次のような紹介文が掲載されている。
<今安志保・今安琴奈氏は母と娘として自らの生命が何のために存在しているのかを探求し続けた結果、気づいたことを原稿にまとめております。志保氏は母親として、娘にどう接すればいいかというところをスタートとしながらも、仕事としての音楽の可能性を活かした事業を通じて、世の中の母親と子供の関係性をより良くする道筋を示しています。そして、琴奈氏は志保氏のような母親に育てられた体験を鮮明に記憶しており、本来、誰もが経験している胎児としての可能性を改めて気づかせてくれています。今の世の中が基本的に、男系家族をベースとしているだけに、女系家族が紡ぐ物語の無限大さに気づくことが人類全体の幸福に貢献することだと感じられると思います。>
●母と娘、大乗菩薩道の歩み
次に、今安琴奈「母と娘、大乗菩薩道の歩み」の中から、興味深いエピソードを紹介しよう。
<母は“本物”にこだわり、“十分にする”ことを重視し育ててくれました。人として生きるための決まり事として、自と他を分けて受け入れることができ、“聞き分けられる”ように母は、全てを体感させてくれていました。そのいくつかをご紹介します。
①「ティッシュ箱遊び」1歳6か月の私。
年頃になると、ティッシュ箱からティッシュを抜きたくなる。
そこで母は何も言わず「どうぞ」と笑顔で手を差し伸べる。
夢中になる私。気が付けば1箱空けきりました。
その瞬間、私の目の前に新しいティッシュ箱が登場しました。
驚きながらも「まだいいの?!」と嬉しい私わティッシュ箱からティッシュを抜き続けます。
1歳6か月ながらに「さすがにやばい?」と思い母の顔を見る私。
しかし母は笑顔で「どうぞ」を続け、あっという間に2箱を開けきります。次の瞬間!3箱目が私の前に。目が点になる私。笑顔の母。
遊びではなく、一生懸命ティッシュを抜く時間が過ぎていきます。
3箱目を抜き切った私は「はぁ」とため息をつきました。
部屋中ティッシュだらけ、冷や汗をかく私は、さすがにやばいと理解できます。次に母がとった行動は、何も言わず笑顔でティッシュをたたみ始めたのです。「あ、そうするのね!」と私は母の真似っ子をし始めました。
3箱分のティッシュを折り終えました。すると初めはキュッと圧縮されているティッシュが一度空気を含むので大きく膨らみます。
それを見て母は一言「ね!?楽しいことはこ~んなに膨らむんだよ:」とニッコリしました。
社会の仕組みを一つ覚えた私です。
②「冬眠がしたい」
2歳の頃の話です。リビングのテレビからは、ディズニー映画が“環境ビデオ”のように流れている毎日でした。
特に好きだったのは「くまのプーさん」です。
ぷーさんは冬眠しません。ですが、テレビで見た熊は冬眠をするのです!
疑問に思った私は母に「冬眠したい」と伝えました。
「わかった!!」と母は答えてくれました。冬眠の約束を次の日の朝に取り付けました。
朝ご飯を食べ、父を見送り、私はワクワクドキドキしてその瞬間を待ちます。
母は何やらせっせと用意をしています.9:30頃、「冬眠するよー!」と母の声で、カーテンを閉め、部屋を真っ暗に、更に潜り込み冬眠しました。
朝ご飯を食べた後だったので、トイレに行きたくなり、「ママ、おしっこ行きたい」と言うと、「冬眠だから行かないよ?」と母は答えました。
何もすることがありません。「ママ?」と呼ぶと「冬眠中だよー」と母。
「この親本気だ!」ということを痛感したと同時に、冬眠に飽きた私から「ママ冬眠終ろう。もう充分わかった」と提案しました。
そこから「おしっこー!!」とトイレへ駆け込みました。
③「洗濯物と琴奈の違いは何?」
4歳の私はある日「なぜ洗濯物は濡れていてもいいのに、私は濡れた服を着たり、雨の日は傘を傘をさして濡れないようにしないといけないのだろう」と疑問に感じていました。
母にそのことを伝えると、「よし!じゃあお洗濯物の気持ちになってみよう!」と湯舟にお湯をため始めた母。
しばらくして、洋服を着たまま2人で湯船に入りました。
不思議な感覚に楽しくなりしばらく遊びました。
「さあ!出ようか!」と母が言い、立とうとした瞬間、立てないのです…何とか手すりに捕まり立てたものの重くて上がれない。
「うううう」となっている私に、「ね!こっちゃんはお洋服を着たままお湯につかってしまうと重たくて、大変でしょ?だからこっちゃんやママたちは乾いたお洋服を着るんだよ!」と母。
また1つ覚えました。
なので、服を着たまま川に入ることも無いですし、濡れないように気をつける癖がつきました。
まだまだたくさんエピソードはありますが、母はこのようにすべて一緒に実践をして娘の私に体験させてくれました。
これらは後に三輪清浄の姿を表し如来道を生きることに直結しています。
●親子関係が劇的に変化した”今安実践”
第5期髙橋史朗塾で是非その他のエピソードも伺いながら、「親としての学び・親になるための学び」を「親道」として深化する実践を確立して、新たな「親道」推進協会を一般社団法人として立ち上げ、全国に広げることに全力を投入したい。
最後に、今安志保さんが親子を劇的に改善した実例を例示して締めくくりたい。
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